昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和2年1月17日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
医薬品や化粧品等の製造販売をする株式会社を営む原告が、第三者がインターネット上の匿名掲示板において原告が違法行為を行っているかのような投稿等を繰り返し行ったことを踏まえて名誉権等を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①当該会社を就職先の1つと考える閲覧者等にとっても、その会長である原告がどのような人物であるかは独自の関心事であると考えられ、当該投稿部分は、その原告の所業に関する内容からして、原告個人について独自にその社会的評価を低下させるものというべきである。
②公共の利害に関する事実に係る行為は、特段の事情のない限り、公益目的で行われたものと推認されるところ、本件投稿に係る記事の内容からすれば、投稿姿勢に著しく真摯性を欠くとか私怨を晴らしたり私利私欲を追求したりする意図があることを窺わせるような特段の事情は見当たらない。
上記の裁判所の判断に関しては、被害者側としては納得のいくものではなかったものと思われます。
会社の代表者に関する投稿については、会社への社会的評価とも相まって、どこまでが公共性がある投稿といえるのか、といった問題があり、ケースバイケースの判断とならざるを得ません。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。