インターネットニュースやSNSの普及により、事件・事故の報道はリアルタイムで拡散されるようになりました。しかし、中には「誤認逮捕」であったにもかかわらず、その情報が半永久的にネット上に残り続け、本人や家族に深刻な影響を与える事態も起きています。本記事では、誤認逮捕とネット報道による“二次被害”の法的問題を取り上げます。
このページの目次
1 誤認逮捕とは?
誤認逮捕とは、実際には無実であるにもかかわらず、犯罪の容疑者として逮捕されることを指します。防犯カメラの誤認、目撃証言の錯誤、捜査機関の過失など、原因はさまざまです。
一旦逮捕されると、警察や報道機関が氏名・年齢・住所などを発表し、インターネットメディアやSNSを通じて全国に広まる可能性があります。たとえ不起訴や無罪となっても、“逮捕された”という事実だけが先行し続けるのが現状です。
2 ネット上に残るデジタルタトゥー
報道記事やSNS投稿は、一度ネット上に掲載されると、検索エンジンやまとめサイト、コピー転載等によって拡散・保存され、完全な削除が極めて困難になります。これがいわゆる「デジタルタトゥー」と呼ばれる現象です。
本人が就職・転職・結婚など新たな生活を始めようとしても、ネット検索で逮捕歴(たとえ誤認であっても)が出てしまえば、不利益が生じる可能性があります。
3 裁判例:誤認逮捕報道記事の削除請求
ある裁判例では、誤認逮捕された男性が、ポータルサイトに残った当時の報道記事に対し「名誉毀損かつプライバシー侵害」であるとして削除請求を行いました。裁判所は「既に不起訴処分が確定し、報道を残す公益性が乏しい」として、検索結果からの削除を命じました。
このように、報道の公益性と個人の名誉・プライバシーとのバランスが裁判では重要視されます。
4 被害に遭った場合の救済策
①報道機関・ポータルサイトへの削除要請
逮捕の事実が誤認である場合、不起訴・無罪となった証拠を添えて削除や訂正を求めます。
②検索結果の削除申立て
GoogleやYahoo!などの検索エンジンに対し、「忘れられる権利」に類似する主張をもって削除申請が可能です。
③損害賠償請求
違法な報道や掲載が原因で名誉毀損が成立する場合、民法上の損害賠償請求が認められる可能性があります。
④再発防止と報道倫理の問題提起
報道機関への申し入れを通じて、匿名報道や経過報道の徹底を求めることも有効です。
誤認逮捕そのものは不運であっても、報道による二次被害を放置してはいけません。名誉・プライバシーが不当に侵害された場合には、法的手段により一定の修復を図ることが可能です。
報道の削除や検索結果の抹消は時間と手間を要しますが、適切な手順を踏めば成功事例も増えています。泣き寝入りせず、早期に専門家へご相談ください。

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