インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和元年12月26日、をご紹介いたします(なお、一部を省略、要約した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
被告は、インターネット上の匿名掲示板において、接客業に従事する原告の源氏名を掲載しつつ、同人が氏名を自腹で買取り、氏名件数ランキングの上位の順位を獲得した旨を掲載した。これに対して、原告は、被告が投稿した当該記事によって原告の名誉が毀損されたと主張し、これに対して、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①源氏名の記載にとどまり、本名の記載がない点で同定可能性の有無が問題となるが、本件スレッドは、その標題に照らせば、本件店舗に関する話題を投稿するためのものであると解されるところ、本件記事が投稿された当時、原告は、本件店舗において当該源氏名を用いて稼働していたこと、及び本件店舗のウエブページ上の原告のプロフィールを紹介する部分には、原告の顔写真も掲載されていたことに照らせば、原告に関するものであるとの同定可能性が十分に認められるものというべきである。
②原告が接客業のコンパニオンという客の評判が重要と考えられる職業に就いていたことに照らせば、本件記事は原告の社会的評価を低下させるものと認めるのが相当である。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。