昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和2年1月17日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
学校法人を営む原告が、第三者が当該学校内でのトラブルに対する原告の姿勢等に関して否定的な投稿等を繰り返し行ったことを踏まえて名誉権等を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①一般の読者の通常の注意と読み方を基準に判断すれば、本件投稿は、読み手に対し、学校長、学年主任及び担任教師が、反省や謝罪をしない加害者に適切な処分をしていないのであって、この学校では、校内で起きた問題行動について適切な対応がなされないという印象を与えるものである。
②本件回答では、診断書等、本件投稿にかかる事実に関して、これに沿う内容の一定の客観的資料が添付されていることに加え、本件投稿にかかる事実が真実であるか否かについて明確な主張をしない原告の訴訟態度も踏まえれば、本件投稿において摘示された事実は真実であると認めるのが相当である。
上記の裁判所の判断に関しては、学校側としては納得のいくものではなかったものと思われます。
学校内部で発生した生徒間のトラブル等についてどのように対応したのか、その対応はどのように評価されるのかといったことは、当該学校の社会的評価に直結するものですので、学校側として注意して取り扱いを行っている所でしょうが、学校側の対応を批判する投稿がなされたとしても、必ずしも名誉権を侵害するものとはなりません。学校の社会的役割等を踏まえてケースバイケースで判断されるということです。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。