昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年5月21日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
ファッションヘルスでコンパニオンとして稼働していた原告が、第三者がインターネット上の匿名掲示板において原告が違法行為を行っているかのような投稿や侮辱する内容の投稿を繰り返し行ったことを踏まえて名誉権等を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①「●って胸整形してない?」と疑問を投げかける内容のものであるところ、「●」が胸を整形していると断言しているものではなく、何らの根拠や具体的事実を示すこともないまま、投稿者が胸を整形しているのではないかと疑問を持っていることを述べる内容にすぎない。そして、投稿者がそのような疑問を抱いているということは、一般人を基準としても、原告の私生活上の事実又はそれらしく受け取られる事実とはただちにいい難い。したがって、本件記事により、原告のプライバシーが侵害されたことが明らかとはいえない。
②また、本件投稿は、「●」の「太客」に対する応対ぶりに関する噂の真偽を質問する内容であり、せいぜい、そのような噂があることを示唆するにとどまるものである。
上記の裁判所の判断に関しては、妥当なものといえます。
具体的な事実を指摘するものではなく、低レベルな侮辱の類であっても、社会通念上許される限度を超える表現である場合には、違法な誹謗中傷行為に該当してしまいます。
基本的なことですが、改めて留意する必要があります。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。