一つの投稿や発言がSNS等で急速に拡散され、非難や攻撃の対象となる「炎上」。当事者に対する人格攻撃や不買運動、企業への大量のクレーム電話など、いわゆる「集団攻撃(集団ネットリンチ)」に発展するケースもあり、社会的・経済的な損失は極めて大きなものとなり得ます。本記事では、炎上被害に対する法的対応の考え方と、実務上の留意点について解説します。
このページの目次
1 炎上と集団攻撃の特徴
炎上の特徴として、以下のような点が挙げられます。
①投稿の趣旨が切り取られて誤解される
②一部の発言が差別的・倫理的に問題視される
③SNS・まとめサイト・掲示板など複数の媒体で拡散される
④匿名ユーザーによる誹謗中傷や私生活の暴露が相次ぐ
⑤被害者への直接攻撃(電話、メール、DMなど)が殺到する
このような状況は、「表現の自由」の範囲を超えた違法行為を含む場合があります。
2 法的に問題となる行為
炎上に乗じたネット上の行為のうち、特に法的に問題となるものには以下が含まれます。
①名誉毀損(刑法230条)
虚偽・真実を問わず、社会的評価を不当に低下させる表現。
②侮辱罪(刑法231条)
具体的事実を摘示しなくても、抽象的に人を侮蔑する発言。
③威力業務妨害(刑法234条)
抗議電話や嫌がらせメールを大量に送り、業務を妨害する行為。
④プライバシー侵害・肖像権侵害
被害者の住所、顔写真、家族構成などの個人情報を晒す行為(いわゆる「特定」)も違法です。
3 裁判例:炎上加害者に対する損害賠償命令
ある裁判例では、ある企業のキャンペーン内容を巡ってSNSで炎上し、個人ユーザーが企業名・担当者の実名を挙げて誹謗中傷を行った事案において、投稿者に対して110万円の損害賠償が命じられました。
裁判所は「批判の範囲を逸脱した攻撃的・感情的表現は、表現の自由の範囲を超えて違法である」と明示しています。
4 被害に遭った場合の対応策
①証拠の確保
投稿内容、投稿日時、URL、スクリーンショットなどを保存します。時系列で整理しておくと、後の法的対応がスムーズです。
②投稿削除とアカウント停止要請
各プラットフォームに対し、利用規約違反を理由に削除やアカウント停止を申請します。
③発信者情報開示と損害賠償請求
匿名投稿者に対し、発信者情報開示請求を行い、名誉毀損や業務妨害を理由に損害賠償を求めることが可能です。
④企業広報の戦略的対応
場合によっては法的措置に加え、記者会見やQ&Aページ作成など、広報対応を組み合わせる必要があります。
炎上は突発的に起こるものですが、被害が拡大するかどうかは初動対応にかかっています。法的な観点からは、違法な投稿に対して迅速に証拠を確保し、被害の拡大を防止する措置を取ることが極めて重要です。
被害を受けた際には、一人で抱え込まず、早期に弁護士へご相談ください。

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