昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年9月10日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
産業廃棄物・特別管理産業廃棄物の収集運搬・処分業及び再生事業等を営む原告が、被告がインターネット上のサイトにおいて、原告に関して「ダメ会社」等と投稿したことについて、名誉権を侵害するものとしてアクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①民事法上の名誉毀損は、事実の摘示によるものに限らず、論評や意見によるものであっても成立する。ある記事の意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきものである。
②本件記事の内容は、具体的な根拠は示されていないものの、一般の読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、原告がダメな会社であるとの印象を与えるものであり、原告の社会的評価を低下させるものといえ、原告の名誉を毀損するものといえる。
上記の裁判所の判断においては、「ダメ」という程度の表現であっても、名誉権を侵害する表現であると認定しております。
この程度の表現であれば大丈夫だろうと考えて利用されやすい表現ではあると思いますが、名誉権を侵害する表現に該当する点は十分に注意が必要です。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。