Archive for the ‘インターネットトラブル全般’ Category

第三者の犯罪行為に関する投稿

2024-04-06

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。

もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年10月14日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告は、経営コンサルタント業を営む株式会社の代表取締役であるところ、被告は

自身が運営するブログ内において、原告が強制わいせつ行為を行い逮捕された事実等を摘示した。これに対して、原告は、名誉毀損を理由として、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告が記載した会社名は、原告が代表取締役を務める株式会社の商号と1文字異なるだけであること、また、記載した住所は、以前の本店所在地であること、代表取締役名は原告と同姓同名であることに鑑みると、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすると、本件記事1の「A株式会社」は原告が代表取締役を務める株式会社のことを指すというべきである。

②一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすると、原告は性犯罪により逮捕されるような人物であるとの印象を与えるものであるから、本件各投稿は原告の社会的評価を低下させるものというべきである。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

仮に、本人としては何らかの使命感等に基づいて告発の一種として行う投稿であったとしても内容によっては、単なる名誉毀損や侮辱に該当してしまうケースも多々ありますので十分に注意が必要です。

自分が投稿する内容が問題ないかどうか、具体的には第三者の社会的評価を低下させる恐れがあるかどうか、また、第三者の名誉感情を侵害するものでないかどうか、といったことを慎重に検討していただくことが非常に重要です。

離婚経緯等を第三者に伝える場合

2024-04-01

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。

もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年11月27日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告と被告は夫婦関係にあったが、調停により離婚をした。その後、被告が離婚の経緯や条件、原告の不貞行為などを記載した電子メールを原告の勤務先の役員及び従業員全員が閲覧可能なメールアドレス宛てに送信した。これに対して、原告は、名誉毀損及びプライバシー侵害を理由として、被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①本件メールの内容のうち、不貞行為等に言及する部分は、原告の社会的評価を低下させるものであるとともに、訴訟や調停の経過及びその結果等について摘示する部分と併せて、原告のプライバシーに属する事実を摘示するものであると認められる。

②本件メールのような他人のプライバシー等に関わる電子メールを送信する場合、関係者の被害の大きさなどを踏まえて、送信先の選択に留意し、少なくとも送信先を誤ることのないよう注意すべき義務を負うというべきである。そのため、本件メールを本件アドレスに送信するに至ったことについて、故意と同視するに足りる重大な過失があったと認めざるを得ない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

また、プライベートな内容であっても関係者に報告する必要が生じるケース等もある一方で、報告内容として名誉毀損やプライバシー侵害に該当するような内容を伝えることは出来ないことを踏まえると、なかなか第三者に伝えることは難しいものといえます。

不特定多数人に対して何らかの事情を伝える場合には、まずその内容が特定人の名誉毀損やプライバシー侵害に該当しないかどうかを十分に注意することが重要です。

相手方の性加害を投稿する場合

2024-03-27

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。

もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和2年12月18日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告と被告は、マッチングアプリのサービスを利用して出会い肉体関係を持つに至ったが、その後、原告から関係性を一方的に終了されたことを機に、被告が自身のSNSにおいて、原告の個人情報を無断で公開するとともに原告が性犯罪者である等と記載する投稿を行った。この一連の被告の行動に対して、原告が名誉毀損に該当するとして不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①本件各投稿は、「原告の容貌,氏名,年齢,出身地,学歴,身長,勤務先等の個人情報を,インターネット上に公開するものであり,原告は,かかる個人情報により個人として特定された上で,強制わいせつ罪及び強制性交罪に及んだ犯罪者であるとの事実の摘示をされるなどしたものと認められる。本件では,原告が性犯罪をしたことをうかがわせる証拠はなく,原告が性犯罪者であるとは認められないところ,個人が性犯罪歴を有するとの虚偽の事実の摘示は,社会的評価を著しく低下させるものである」。

②加えて、本件各投稿の内の一部の投稿は、原告の勤務先に関連するウェブページにおいて投稿されたものであり、その閲覧者との関係で原告の精神的損害は特に大きいものといえる。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

また、重要なことですが、名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、前科となるおそれがあり、当人のその後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要であることを再度ご注意ください。

作家に対する名誉毀損

2024-03-22

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年6月10日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

作家である原告が、被告に対して、被告がインターネットに開設された電子掲示板やブログにおいて、原告を脅迫し又はその名誉を毀損する内容の記事を投稿したに関して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①本件各投稿において、犯罪行為であるストーカーという用語を用いて、盗作のために原告が被告の著作物を常にチェックして回っているとの印象を与える記事であって、社会的評価を低下させるものといえる。

②また、原告が被告のインターネット掲示板への書き込みを流用、剽窃して、原告の作品として発表したとの事実を摘示するものでもある。このような内容は、原告が作家として不適切な行為をする人物であるとの印象を与えるものであって、原告の社会的評価を低下させる記事である。

③原告が、被告の著作物等を盗作したものと認めるに足りる証拠はない。また、インターネット上に原告が盗作しているとの疑惑を示す記事が存在したとしても、これによって原告が著作を発表する過程で実際に被告を含めた第三者の著作ないし発信内容を剽窃したことまでを裏付けるものとはいえない。

④被告は、原告に対する加害行為を実行するつもりはなかったと主張するが、被告の主観的な事情であって、被告による各投稿の違法性に直接影響するものではない、

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというもの、あるいは何らかの主観的な公益目的に基づくものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもあり、その後の人生に大きな悪影響を及ぼすことも十分考えられます。

予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

インフルエンサーに対する名誉毀損

2024-03-17

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年6月30日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告は、インフルエンサーと呼ばれる諸活動を行うものであるところ、原告に対して批判的な投稿をツイッター(現X)において繰り返す被告に対して、名誉を毀損され、また、名誉感情を侵害された旨主張して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①本件各ツイートは、原告が、自身の妊娠に向けた一連の活動に関して虚偽の投稿をするような人物であり、また、そのことに関して多数人から批判を受けるような人物であるとの印象を一般の閲覧者に与えるもので、原告の社会的評価を低下させるものというべきである。

②本件各ツイートは、SNS等を通じて多数人に対して情報を発信し、書籍を出版するなどの活動をしている原告が行った、妊娠に向けた一連の活動についての情報発信に関するものであること等を踏まえると、公共の利害に関するものであり、専ら公益を図る目的で行われたものと認められる。

③原告自身が過去の自らの「炎上」について記載していることなどに照らすと、本件各ツイートの投稿が社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認めるに足りないものである。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、刑事事件に発展するリスクもありますので、一歩間違えるとその後の人生に大きな悪影響を与えかねない問題となり、最大限注意をする必要があります。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、慎重にその後の対応方針を検討するためにも、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

協同組合における名誉毀損

2024-03-12

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年7月15日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告は、青果物類の販売等を事業内容とし、市場で仕入を行うために協同組合に加入しているところ、同組合の別の組合員である被告らが、原告に関して虚偽の事実を記載した書面を送付したことによって、原告の名誉及び信用が棄損されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①本件文章は、一般人の普通の注意と読み方を基準とすると、原告が保証金を差し押さえられており仕入れができない旨適示しているといえる。そして、これが真実であるとすれば、原告は代払取引の停止をされる可能性があり仕入れ先からの信用棄損につながるものといえる。

②また、取引に影響する保証金の帰趨は、取引先等にとって極めて関心が高い事柄であると考えられること、本件文書を一部の組合員に送付していても現に送付した組合員以外の者に伝播していること等に鑑みると、市場内全体に伝播する可能性があったといえる。

③なお、不法行為により相当の精神的苦痛を受けたというべきであるが、他方で原告の新規事業等具体的な影響が明確ではないことも考慮すると、慰謝料額が高額になるとまでは認められない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、一歩間違えるとその後の人生に大きな悪影響を与えかねない問題となり、最大限注意をする必要があります。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

問題行動を通報することは名誉毀損に該当するかどうか

2024-03-07

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年8月18日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

原告が、同じ会社の同僚である被告が原告によるストーカー行為等の内容を含むメールを会社内で送信したことにより、原告の名誉を棄損し、またプライバシーを侵害したとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告が勤務先会社に報告した内容は、従業員間のトラブルの防止や被告の勤務先会社の信用毀損の防止等の目的で一定の範囲で情報共有されることが見込まれるのであって、被告が報告した直接の担当者のみならず一定の広がりのある範囲で情報が伝達される可能性が高いといえる。したがって、被告による一連の行為によって原告の社会的評価は低下するものといえる。

②もっとも、被告は、警察からも被告勤務先会社との情報の共有を指示されていたこと等からすると、被告が被告勤務先会社に報告する行為は,その業務に関わる正当な理由のあるものといえ名誉毀損行為の違法性を阻却するといえる。

③これらの諸事情を比較すると、被告の報告する理由に関する諸事情は、原告のプライバシー情報に関わる事実を公表されない法的利益を優越し、被告の行為が不法行為としての違法性を有するものとはいえない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、最大限注意をする必要があります。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

マンション管理組合における名誉毀損

2024-03-02

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年9月14日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

マンションの居住者である原告が、マンション管理組合の理事である被告らに対して、同人らが別の理事らに送信した電子メールにより名誉権及び名誉感情が侵害された等として、不法行為による損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①その性質上外部へ公表することが予定されたものとはいえないこと、本件管理会社の3名の従業員がその業務の一環として受信した本件メールを不特定多数の者に漏出させることは考え難いこと、本件メールの内容が本件マンションの住人に広く知れ渡った様子はうかがえないことなどからすると、本件メールやその内容が上記15名から他人へと漏出して不特定多数の者に伝播する可能性は乏しいものであったということができる。よって公然性は認められない。

②本件メールによる原告の名誉感情の侵害につき、被告らに故意ないし過失があるものとは認められない。よって、その余の点について検討するまでもなく名誉感情の侵害を理由に被告らの不法行為責任の成立を主張する原告の主張はいずれも理由がなく採用できない。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。そのため、心持として、投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、最大限注意をする必要があります。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

労働組合における名誉毀損

2024-02-27

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年10月29日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

会社在職中に労働組合の組合員であった原告が、会社を退職後、当該労働組合の幹部である被告らが、①会社内の会議で原告が破産する旨発言して原告の名誉を毀損させるとともに、②組合の集会において、所属組合員に対し、原告が破産する旨が記載された資料を配布するとともにこれを読み上げ、もって原告の名誉を毀損したと主張し、被告らに対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告らが本件発言を行った当時、原告について破産手続は未だ開始されていなかったから、官報公告の存在を理由に本件発言による原告の社会的評価の低下を否定することはできない。また、たとえ破産者の破産の事実が官報公告されるとしても、現実にこれを認識することができる者は限られており、その情報に接していない大多数の者にとっての当該破産者の社会的評価はなお保護に値するというべきであるから、本件発言後に原告が破産し、これについて官報公告がされたことによって、本件発言において原告の社会的評価を低下させるに足りるものというべきである。

②被告らが指摘する従前の使途不明金の発生の経緯等を踏まえても、被告らの上記主張を裏付ける具体的な事情があったと認めることは困難である。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないと思ってのものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を低下させるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

名誉毀損は、民事上の問題となるにとどまらず刑事事件に発展するリスクもありますので、心持としては、可能であれば投稿することを控えるべきかということを改めて検討していただくことが余計なトラブルを回避するための最も効果的な方法です。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてあります。そのため、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

ネットスラングと名誉毀損

2024-02-22

インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。

特に、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。

本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年11月10日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。

1 事案の概要

被告がツイッター(現X)において原告を揶揄する投稿を繰り返したことを踏まえて、原告が被告に対して不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

裁判所は、大要、以下の通り判断しました。

①被告が投稿した「統失」との用語は、統合失調症を意味すると解することができ、同記載は、原告が統合失調症に罹患していることを述べるものと解することができる。そして、統合失調症は、社会生活に支障を来し得る精神疾患であると理解されているということができ、これらを踏まえると、本件投稿は原告の社会的評価を低下させるものというべきである。

②慰謝料額を検討する上では、本件投稿の記載内容が精神疾患に関するものであり原告の社会的評価を相応に低下させ得るものであること、本件投稿は会員制オンラインサロンでされたものであり閲覧者は限定されるものの会員数が3200名を超えるサロンであることからすると相応の影響があると考えられること、他方、このようなサロンの主催者への批判はある程度受忍すべきものであること等を総合的に踏まえる必要がある。

3 インターネットの利用には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。

ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてあります。被害者の立場にせよ加害者の立場にせよ何らかのトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

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