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「死ね」「ブス」はアウト。ネット上の暴言が法的責任を問われるライン
ネット上の喧嘩や炎上でよく見かける、「死ね」「消えろ」「ブス」「キモい」といった単純な暴言。言われた方は深く傷つきますが、こうした短い言葉だけで法律上の責任を問うことはできるのでしょうか?
結論から言うと、「言葉単体」での判断は難しく、前後の文脈や回数、執拗さによって「アウト(違法)」かどうかが決まります。
1 「受忍限度」という考え方
裁判所が違法性を判断する際、「受忍限度」という基準を使います。
これは「社会生活を送る上で、我慢すべき限界」のことです。ネット上の多少の言い争いは「お互い様」とされることもありますが、この受忍限度を超えた攻撃は違法となり得ます。
2 「死ね」「殺す」などの生命に関わる言葉
「死ね」という言葉は、単発であれば侮辱罪にとどまるケースが多いですが、執拗に繰り返されたり、精神的に追い詰められたりした場合は違法性が認められやすくなります。
さらに進んで「殺すぞ」「家に行って火をつけるぞ」といった具体的な危害の告知が含まれる場合は、「脅迫罪」が成立する可能性があります。これは名誉毀損や侮辱よりも重い罪であり、警察が緊急で動くケースもあります。
3 「ブス」「デブ」などの容姿に関わる言葉
容姿に対する誹謗中傷は、具体的な事実の摘示ではないため、主に「侮辱(名誉感情の侵害)」の問題となります。 一回言われただけでは法的措置が難しい場合もありますが、以下のようなケースでは違法と判断される可能性が高まります。
①執拗な繰り返し:何度も粘着質に投稿されている。
②拡散性:多くの人が見る掲示板やSNSで、タグ付けをして拡散させている。
③職業への影響:アイドルやモデルなど、容姿が業務に直結する人の場合、営業妨害として捉えられることもあります。
4 実際の裁判例の傾向
近年、ネット上の誹謗中傷に対する司法の判断は厳しくなっています。かつては「ネットは便所の落書きだから仕方ない」と軽視される風潮もありましたが、現在は「匿名であっても人格攻撃は許されない」という判断が主流です。
「バカ」の一言でも、それが数百回書き込まれれば、平穏な生活を害するとして不法行為と認定されるケースは十分にあります。
5 一人で悩まず、証拠を持って相談を
「これくらいの悪口で相談していいのかな?」と迷う必要はありません。 「死ね」「キモい」といった言葉の羅列であっても、それがあなたに恐怖や苦痛を与えているなら、それは立派な権利侵害です。
発信者情報開示請求を行うかどうかは、費用の対効果も含めて慎重に検討する必要がありますが、まずは専門家の意見を聞くことが解決への第一歩です。相手の投稿が消される前に、URLとスクリーンショットを保存してご相談ください。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
ネットの書き込みは犯罪になる?刑事告訴(警察への相談)と民事訴訟の違い
ネットトラブルの被害に遭った際、「相手を訴えたい」という言葉をよく耳にします。しかし、この「訴える」には、大きく分けて2つの意味が含まれていることをご存知でしょうか。
それは「刑事(けいじ)」の手続きと「民事(みんじ)」の手続きです。この2つは目的も手続きも全く別物です。 ここを混同していると、解決までの道のりで思わぬ壁にぶつかることがあります。
1 刑事手続:相手に「罰」を与える
刑事手続きの目的は、国家が加害者に対して刑罰(懲役、罰金、科料など)を与えることです。被害者が警察署に「告訴状」や「被害届」を提出することから始まります。
①対象となる罪
名誉毀損罪、侮辱罪、脅迫罪、業務妨害罪など。
②メリット
相手に「犯罪者」としての責任を負わせることができ、再犯防止の強力な抑止力になります。
③注意点
警察が動いて犯人を逮捕・起訴してくれても、被害者にお金(慰謝料)が入ってくるわけではありません。罰金刑になっても、そのお金は国庫に入ります。
また、警察は「民事不介入」の原則があるため、単なる悪口のレベルや、犯罪構成要件を満たしているか微妙な事案では、なかなか動いてくれないこともあります。
2 民事手続き:相手から「賠償」を得る
民事手続きの目的は、被害者の損害を回復することです。具体的には、書き込みの削除や、慰謝料(損害賠償金)の支払いを求めます。 弁護士に依頼して行う「発信者情報開示請求」は、主にこの民事手続きの準備段階にあたります。
①できること
投稿の削除、投稿者の特定、慰謝料請求、謝罪広告の掲載請求など。
②メリット
金銭的な被害回復ができ、調査費用(弁護士費用)の一部も相手に請求できる場合があります。
③注意点
相手にお金がない場合、回収できないリスクがあります。また、民事で勝訴しても、相手に「前科」がつくわけではありません。
3 刑事と民事、どちらを選ぶべき?
結論から言えば、「どちらか一方」ではなく「両方」行うケースが多いです。
特に悪質な誹謗中傷の場合、以下のような流れが一般的です。
①民事手続きで犯人を特定する (警察はIPアドレスの特定捜査に慎重な場合も多いため、まずは弁護士が民事で特定することが近道になることが多いです)
②特定した相手に対して、損害賠償請求(民事)を行う
③同時に、警察へ刑事告訴(刑事)を行う 「示談に応じなければ刑事告訴を取り下げない」という交渉カードとしても機能します。
4 最適な戦略を立てるために
「とにかく相手を刑務所に入れたい」のか、「慰謝料をとって反省させたい」のか、被害者の方が何を一番望むかによって、とるべき戦略は変わります。
当事務所では、依頼者様の気持ちに寄り添い、刑事・民事の両面から最適な解決策をご提案します。まずは法律相談にて、現在のご状況をお聞かせください。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
肖像権侵害の判断基準-SNSに勝手に写真を載せられた場合の対処法
スマートフォンの普及により、誰もが気軽に写真を撮り、SNSにアップする時代になりました。それに伴い急増しているのが「肖像権」に関するトラブルです。
「友人が勝手に私の変顔をインスタに載せた」「街中で撮影された動画に自分が映り込んでいてYouTubeにアップされた」 これらは法律的に許されるのでしょうか?
1 肖像権とは?
肖像権とは、法律の条文に明記されているわけではありませんが、判例上認められている権利で、「みだりに自分の容ぼう等を撮影されたり、公表されたりしない権利」のことを指します。大きく分けて以下の2つの側面があります。
①プライバシー権的側面
勝手に撮影・公表されない権利(一般人が主に対象)
②パブリシティ権
顧客誘引力(経済的価値)を勝手に利用されない権利(芸能人・有名人が主に対象)
一般の方のトラブルでは、前者の「プライバシー権としての肖像権」が問題になります。
2 肖像権侵害になるかどうかの基準
すべての「無断掲載」が違法になるわけではありません。裁判所は、主に以下の要素を総合的に考慮して判断します。
①人物が特定できるか
顔がはっきり映っているかどうかが重要です。遠くの風景の一部として小さく映っている場合や、後ろ姿、ピンボケ、マスクやサングラスで個人が識別できない場合は、侵害とは認められにくいです。
②撮影・公開の場所
自宅内などのプライベートな空間か、公園や路上などの公共の場所か。公共の場所であっても、特定の人物を狙って執拗に撮影する行為は違法となる可能性があります。
③撮影・公開の目的と必要性
報道目的や防犯目的など正当な理由があるか、あるいは単なる興味本位や嫌がらせか。
④本人の承諾(許可)の有無
「撮っていいよ」と言ったとしても、「SNSに載せていいよ」と言ったことにはなりません。撮影の許可と公開の許可は別物です。
3 よくあるケースと対応策
①集合写真のSNSアップ
友人間でのトラブルで多いのがこれです。基本的には「掲載を取り下げてほしい」と直接伝えるのが一番ですが、関係性がこじれている場合や、悪意を持って晒されている場合は弁護士による削除請求が有効です。
②隠し撮り・リベンジポルノ
交際相手との私的な写真や動画が公開された場合、これは重大な権利侵害です。肖像権侵害だけでなく、リベンジポルノ防止法違反や名誉毀損に該当する可能性が高く、警察への刑事告訴も視野に入れるべき緊急事態です。
4 泣き寝入りせず削除を求める
「風景の一部だから大丈夫」「モザイクをかけたから大丈夫」と投稿者は主張するかもしれませんが、文脈や周囲の情報と合わせることで個人が特定できる場合、肖像権侵害は成立し得ます。
勝手に写真を公開され、精神的苦痛を感じている場合は、画像の削除や損害賠償請求が可能です。まずはスクリーンショットを保存の上、ご相談ください。

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「プライバシー侵害」はどこから?ネットでの実名・住所晒しへの法的対応
「ネット掲示板に勝手に本名を書かれた」、「自宅の住所が晒されている」
こうした「プライバシー侵害」は、名誉毀損と並んで非常に多い相談の一つです。
匿名性が基本のインターネットにおいて、個人の私生活に関する情報が暴露されることは、精神的に大きな苦痛を伴います。では、具体的にどのような情報が公開されると「プライバシー侵害」として法的措置が取れるのでしょうか。
1 プライバシー侵害の「3つの基準」
過去の裁判例(「宴のあと」事件など)から、プライバシー侵害が成立するかどうかは、主に以下の3つの要件ですべて満たすかどうかで判断されます。
①私生活上の事実、または私生活上の事実らしく受け取られる事柄であること
②これまで一般の人々に知られていない事柄であること(非公知性)
③一般人の感覚として、公開されることを欲しない事柄であること
つまり、「誰にも知られたくない私生活の秘密」を「勝手にバラされた」場合に成立します。
2 具体的にアウトになる情報の例
以下のような情報は、プライバシー侵害として認められる可能性があります。
①氏名、住所、電話番号: 個人の特定に直結する基本情報
②勤務先、年収、資産状況: 経済的な信用に関わる情報
③前科、前歴: 過去の犯罪歴(実名報道されていても、時間が経過していれば保護される場合があります)
④病歴、身体的特徴、性的指向: 極めてデリケートな情報(センシティブ情報)
⑤家庭内のトラブル: 離婚歴、不倫の事実、家族構成など。
3 実名や顔写真が出ているだけでは不十分?
「自分の名前がネットにあるだけで消したい」という相談もありますが、単に名前があるだけでは削除が難しい場合もあります。
例えば、会社の代表者としてホームページに名前が載っている場合や、自らSNSで公開している情報は、「他人に知られたくない秘密」とは言えないからです。
しかし、前後の文脈が重要です。「〇〇(実名)は詐欺師だ」のように、実名と共に誹謗中傷が書かれている場合は、プライバシー侵害と名誉毀損の両方を主張できる可能性があります。
4 プライバシー侵害への対処法
プライバシー情報は一度拡散してしまうと回収が困難です(デジタルタトゥー)。
そのため、名誉毀損よりもさらに「スピード」が重要になります。
①サイト管理者への削除請求
裁判手続きを経なくても、ガイドライン違反として削除に応じてもらえるケースがあります。
②送信防止措置依頼
プロバイダ責任制限法に基づき、正式な書類を送って削除を求めます。
③法的措置(仮処分・開示請求)
削除に応じない場合や、投稿者を特定して慰謝料を請求したい場合は、裁判手続きを行います。
ご自身の情報が晒されて不安な日々を過ごされている方は、すぐに弁護士へ相談し、情報の拡散を止める手立てを講じましょう。

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誹謗中傷と名誉毀損の違いとは?侮辱罪との境界線や成立要件
インターネット上で悪口を書かれたとき、「これは誹謗中傷だ!」「名誉毀損で訴えてやる!」と思う方は多いでしょう。しかし、法律の世界には「誹謗中傷罪」という名称の犯罪は存在しません。
法的に問題となるのは、主に「名誉毀損(めいよきそん)」と「侮辱(ぶじょく)」の2つです。この2つは似ているようで、成立するための条件が大きく異なります。
今回は、ネットトラブルで最も重要なこの2つの違いについて解説します。
1 「事実」を摘示しているかどうかが分かれ目
名誉毀損と侮辱、どちらに当てはまるかを判断する最大のポイントは、書き込みの中に「具体的な事実」が含まれているかどうかです。
(1)名誉毀損罪(刑法230条)
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。
ここでのポイントは「事実の摘示」です。
例えば、「Aさんは会社の金を横領している」「Bさんは不倫をしている」といった書き込みは、証拠の有無にかかわらず「具体的なエピソード(事実)」を示して相手の社会的評価を下げているため、名誉毀損になり得ます。
(2)侮辱罪(刑法231条)
「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合に成立します。
具体的なエピソードはなくとも、相手の人格を否定するような言葉がこれに該当します。 例えば、「バカ」「アホ」「チビ」「ハゲ」「無能」といった抽象的な罵倒は、事実の摘示ではないため、名誉毀損ではなく侮辱罪の対象となります。
2 「公然と」とはどういう意味か?
どちらの罪にも共通する要件として「公然と」という言葉があります。
これは「不特定または多数の人が認識できる状態」を指します。
インターネット上の掲示板、X(旧Twitter)、インスタグラムのコメント欄などは、誰でも見ることができるため「公然と」の要件を満たします。
一方で、1対1のダイレクトメール(DM)や、少人数の鍵付きグループチャット内での悪口は、原則として「公然性」がないため、名誉毀損や侮辱罪は成立しにくい傾向にあります
3 民事上の損害賠償額(慰謝料)の違い
刑事罰だけでなく、民事裁判で慰謝料を請求する場合も、名誉毀損と侮辱では相場が異なります。
①名誉毀損の場合
社会的信用へのダメージが大きいため、慰謝料相場は数十万円〜百万円程度(個人の場合)と高めになる傾向があります。
②侮辱(名誉感情の侵害)の場合
抽象的な悪口にとどまるため、数万円〜数十万円程度にとどまるケースが多いです。
4 どちらかわからなくても弁護士へ相談を
「この書き込みは事実のような、悪口のような、どちらとも取れる…」と迷うケースも少なくありません。 ご自身で判断して「これは罪にならないかも」と諦めてしまう前に、専門家である弁護士にご相談ください。文脈全体を分析し、法的にどの権利侵害を主張できるか、最適な構成案をご提案します。

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投稿者が未成年だった場合:親権者への損害賠償請求は可能か?
発信者情報開示請求によって匿名投稿者を特定した結果、その加害者が中学生や高校生などの未成年者であったというケースは少なくありません。特にSNS上での不用意な発言や「ノリ」による誹謗中傷、いじめなどが原因となる場合です。
加害者が未成年である場合、「未成年だから責任は問えないのではないか」と考える被害者の方もいますが、そのようなことはありません。未成年者が行った違法な行為についても、民事上の責任を追及することは可能です。
1 未成年者本人への責任追及:責任能力の有無
まず、未成年者本人に直接、損害賠償責任を負わせることができるかどうかは、その未成年者に「責任能力」があるかどうかによって判断されます(民法712条)。
(1)責任能力とは
自己の行為が法的にどのような結果を招くかを理解し、判断できる精神能力を指します。
一般的な目安:裁判実務では、おおむね12歳〜13歳以上の未成年者は責任能力があると判断される傾向にあります。高校生であれば、通常は責任能力が認められます。
(2)責任能力がある場合
責任能力が認められた未成年者は、成人と同じく、自身が行った誹謗中傷などの不法行為に基づき、被害者に対し直接損害賠償責任を負います。
(3)責任能力がない場合
責任能力がないと判断された未成年者(例:小学生など)は、本人に損害賠償責任を負わせることができません。この場合、責任は親権者に移行します。
2 親権者への責任追及:監督義務者としての責任
未成年者の誹謗中傷行為について、その親権者(通常は両親)に対しても損害賠償を請求できる場合があります。これは、以下の2つの法的根拠に基づきます。
(1)監督責任(民法714条)
未成年者に責任能力がない場合、その未成年者を監督する法定の義務を負う親権者(監督義務者)が、代わりに損害賠償責任を負います。
ただし、例外規定あり: 親権者が「その義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」は責任を負いません。しかし、ネット上での誹謗中傷の場合、親が子どもが何を投稿しているか適切に監督していないと判断され、責任が認められるケースが多いです。
(2)監督義務違反(民法709条)
未成年者に責任能力がある場合でも、親権者自身の「監督義務違反」を理由に損害賠償責任を追及できる可能性があります。
例:過去にもネットでトラブルを起こしていることを知っていながら放置していた、SNSの利用ルールを設けず野放しにしていたなど、親自身の監督が不十分であったと認められる場合。
現実的には、未成年者本人に経済力が乏しいことが多いため、慰謝料などの回収を確実にするためにも、親権者に対して監督義務違反による損害賠償請求を行うことが、被害者にとって最も有効な手段となります。
3 まとめ:親権者への請求を含めた戦略を
加害者が未成年であっても、誹謗中傷によって生じた被害は深刻であり、その責任を追及することは可能です。特に、未成年者本人の資力不足が予想されるため、親権者の監督責任を追及することが、慰謝料などの回収を確実にする重要な戦略となります。

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開示請求で特定できた投稿者に請求できる「慰謝料」
発信者情報開示請求によって匿名投稿者の特定に成功した後、いよいよその加害者に対して損害賠償請求を行います。この損害賠償の中心となるのが、精神的苦痛に対する賠償金である「慰謝料」です。
被害者が受けた苦痛は計り知れませんが、法的に請求できる慰謝料の額には、過去の裁判例に基づく一定の相場と算定基準があります。
1 慰謝料の金額を増減させる具体的な算定基準
慰謝料の額は、上記の相場を基準としつつ、以下の要素を総合的に考慮して、裁判所が判断します。
(1)加重要素(慰謝料が増額される要因)
①被害の重大性: 投稿内容が、被害者の職業や信用に致命的なダメージを与えた場合。
②表現の悪質性: 差別的、卑劣な表現、または虚偽の内容である場合。
③投稿の拡散力: 大規模なSNSや多数が閲覧する掲示板など、影響力が大きい媒体での投稿である場合。
④被害の継続性: 長期間にわたり投稿が放置されていた、または繰り返し投稿されていた場合。
⑤加害者の態度: 訴訟や交渉において反省の態度が見られない、または不誠実な対応に終始した場合。
(2)減額要素(慰謝料が減額される要因)
①投稿の軽微性: 内容が抽象的で、社会的評価の低下が限定的である場合(ただし、侮辱罪レベル)。
②公然性の低さ: 閲覧者が限定的なサイトやグループ内での投稿であった場合。
③加害者の資力: 加害者が経済的に極めて困窮している場合(ただし、原則的な相場より大幅に減額されることは稀です)。
④迅速な削除・謝罪: 加害者が特定前に自ら投稿を削除したり、特定後に速やかに謝罪したりした場合。
2 慰謝料に加えて請求できる「付随する損害」
加害者に対し請求できるのは慰謝料だけではありません。以下の費用も、不法行為(権利侵害)と因果関係のある損害として、加害者に請求します。
(1)特定にかかった弁護士費用・実費
発信者情報開示請求の手続き(仮処分、訴訟)に要した弁護士費用と裁判所への実費の全額が、損害として認められます。
(2)損害賠償請求訴訟の弁護士費用
加害者への損害賠償請求訴訟(または交渉)にかかった弁護士費用の一部(通常、認容された損害額の約1割)も、損害として加害者に負担させます。
(3)信用回復費用(事業者・企業の場合)
企業や店舗が被害者の場合、悪評の打ち消しや信用回復のために要した費用(広告費、広報費用など)も、因果関係が立証できれば請求可能です。
3 まとめ:弁護士による適切な金額の算定と交渉
慰謝料の相場は存在しますが、最終的な請求額と和解額は、弁護士による「被害の重大性」の的確な立証と、加害者との交渉力によって大きく左右されます。
特に、特定手続きに要した費用全額を加害者から回収するためにも、専門知識を持つ弁護士のサポートが不可欠です。

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ネット記事のコメント欄での中傷
ニュースサイトやブログなどに設けられたコメント欄は、記事に対する読者の意見交換の場として機能しますが、しばしば匿名での感情的な誹謗中傷が書き込まれる「無法地帯」と化すことがあります。
コメント欄での中傷は、被害者にとっては深刻な被害をもたらしますが、加害者がコメント投稿者である一方、そのコメントを公開しているのは記事の運営者です。
この場合、被害者は「誰に」「どのような法的責任」を問うことができるのでしょうか。
1 誹謗中傷コメントの「投稿者(コメンター)」の責任
投稿者は、自らの意思で誹謗中傷となるコメントを書き込んでいるため、一次的な法的責任を負います。
(1)民事責任(不法行為責任)
投稿内容が名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害などの不法行為に該当する場合、投稿者は被害者に対し、慰謝料を含む損害賠償責任(民法709条)を負います。
(2)刑事責任
内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事責任を問われる可能性があります。
コメンターの責任を追及するためには、前回の記事で解説した通り、まず発信者情報開示請求の手続きにより、匿名であるコメンターの氏名・住所を特定する必要があります。
2 被害者が取るべき適切な法的対応の流れ
コメント欄での中傷被害に遭った場合、被害を最小限に抑え、責任を追及するための流れは以下のようになります。
ステップ1:証拠保全
コメントのスクリーンショット、URL、投稿日時など、証拠を確実に保全します。
ステップ2:記事運営者への削除請求
運営者に対し、コメントの削除を最優先で要求します。弁護士からの法的通知により、運営者に「権利侵害の事実」を明確に認識させ、削除義務を発生させます。
ステップ3:発信者情報開示請求の検討
削除と並行して、投稿者の特定を目指し、発信者情報開示請求手続きを開始します。これにより、投稿者の氏名・住所を特定し、損害賠償請求の準備に入ります。
ステップ4:損害賠償請求
投稿者が特定できた場合、投稿者に対し慰謝料などの損害賠償を請求します。また、運営者が削除義務を怠っていた場合は、運営者に対しても損害賠償を請求できる可能性があります。
3 まとめ:投稿者・運営者双方への法的対応
コメント欄での誹謗中傷は、加害者が匿名であることや、運営者の責任追及が複雑であることから、被害者が単独で解決することが非常に困難です。
弁護士に依頼することで、投稿者への責任追及と、運営者への削除義務の発生と追及を並行して行う、最も効果的な戦略を立てることが可能です。特に、運営者に対して迅速に法的根拠を示して削除を迫ることは、被害の拡大防止と運営者の責任追及の両面で重要な意味を持ちます。

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企業のSNS炎上対策
企業にとって、SNSは顧客との重要な接点であり、マーケティングや情報発信の強力なツールです。しかし、社員による不適切な投稿(いわゆる「バイトテロ」や不謹慎な発言)、あるいは企業公式アカウントの不用意な発言が原因で発生する「炎上」は、企業の信用(レピュテーション)を一瞬にして失墜させる深刻なリスクを伴います。
炎上は、単なる謝罪で収まらず、株価の下落、不買運動、そして顧客からの損害賠償請求など、法的な問題に発展する可能性を秘めています。
1 企業のSNS炎上がもたらす法的リスク
炎上の原因となった不適切な投稿は、企業に対し様々な法的責任をもたらす可能性があります。
(1)契約責任
使用者責任(民法715条): 投稿が企業の業務遂行に関連して行われた場合、企業は社員と連帯して被害者への損害賠償責任を負う可能性があります。
(2)損害賠償責任(民事)
投稿内容が他社や顧客への名誉毀損、信用毀損、またはプライバシー侵害にあたる場合、企業は被害者から民事上の損害賠償請求を受けます。
(3)刑事責任
虚偽の情報を流布したり、他社の業務を妨害したりした場合、信用毀損罪や偽計業務妨害罪(刑法)といった刑事責任を問われるリスクがあります。
2 炎上発生時の「初期対応」の重要性
炎上発生後の数時間から数日の初期対応は、被害の拡大を食い止めるために極めて重要です。誤った対応は、さらなる炎上(「二次炎上」)を招き、企業の信用を決定的に損ないます。
(1)事実関係の確認と証拠保全
感情的にならず、誰が、いつ、どのような内容を投稿したのか、冷静に事実を確認します。問題の投稿や関連するコメントの証拠を最優先で保全します(削除される前にスクリーンショット、URLを記録)。
(2)迅速な投稿の削除
問題の投稿は直ちに削除し、被害の拡大を食い止めます。削除しない限り、炎上は継続します。
(3)謝罪文の公表
速やかに、真摯で誠意ある謝罪文を公表します。謝罪文には以下の要素を含めるべきです。①事実の認容と謝罪の意:企業の非を認め、深く謝罪する。
②原因の究明と再発防止策:投稿に至った経緯を説明し、具体的な再発防止策を明記する。③法的見地の確認:投稿内容に名誉毀損や信用毀損の可能性がある場合は、謝罪文の表現について事前に弁護士の確認を得て、二次的な法的リスクを回避します。
3 平時から弁護士と連携して行うべき対策
炎上リスクを未然に防ぎ、万が一の際の対応をスムーズにするためには、平時からの法的準備が不可欠です。
(1)SNS利用ガイドラインの策定
社員に対し、SNS利用に関する明確なルールを定めたガイドラインを策定し、周知徹底します。特に、「他社の誹謗中傷禁止」「機密情報の漏洩禁止」「会社名義での不適切な発言禁止」などを盛り込む必要があります。
(2)社員教育(コンプライアンス研修)の実施
ガイドラインに基づき、社員への定期的な研修を実施します。投稿の法的リスク(名誉毀損、著作権侵害など)について、具体例を交えて教育します。
(3)緊急対応マニュアルの整備
炎上発生時の「誰が」「いつ」「何を」行うか、連絡体制や対応手順(証拠保全、削除、謝罪文作成、広報部門との連携)を明記したマニュアルを弁護士と連携して作成します。
4 まとめ:弁護士は「リスクマネジメントのパートナー」
企業のSNS炎上は、単なる広報の問題ではなく、信用・業務・雇用といった様々な法的リスクを内包する重大な危機です。
炎上発生時に冷静かつ適切な初期対応を取れるかどうかで、企業の将来が左右されます。弁護士は、炎上した際の法的リスクを最小限に抑えるための謝罪文のリーガルチェックや、社員への懲戒処分に関する適法性の確認、そして被害者からの損害賠償請求への対応を一貫してサポートします。

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「名誉感情の侵害」で訴えることはできる?
インターネット上の誹謗中傷は、被害者の社会的評価を下げる「名誉毀損」(事実の摘示が必要)や「侮辱」(事実の摘示は不要だが公然性が必要)といった形で法的責任を問われることが一般的です。
しかし、法的責任を問えるのは、これらの罪に該当する場合だけではありません。特定の個人に対するひどい暴言や罵倒は、その人の「名誉感情」を傷つける行為として、民事上の損害賠償請求の対象となる可能性があります。
1 名誉毀損と「名誉感情の侵害」の決定的な違い
名誉毀損と名誉感情の侵害は、どちらも「名誉」という言葉を含みますが、法的に保護される対象が異なります。
| 保護される対象 | 名誉毀損 | 名誉感情の侵害 |
| 対象 | 外部的名誉:社会における客観的な評価・地位 | 内部的名誉:自分自身が大切にする自尊心や名誉意識 |
| 成立要件 | (1) 公然性、(2) 事実の摘示(または事実の摘示がなくても侮辱となる暴言) | 侮辱的な言動により、個人の自尊心が社会通念上許容されない程度に侵害されたこと |
| 主な例 | 「あの人は会社の金を横領している」 | 「お前は生きてる価値がない」「気持ち悪い」といった、単なる罵倒や悪口 |
2 名誉感情の侵害が認められる基準
「名誉感情」は個人の主観的なものであるため、単に「傷ついた」というだけでは法的侵害として認められません。裁判所が名誉感情の侵害を認めるのは、書き込みが以下の基準を満たす場合です。
(1)社会通念上許容される限度を超えた侮辱的表現であること
その表現が、一般の社会生活において許容される限度を明らかに超えていると判断される必要があります。
(2)公然性は原則として不要
名誉毀損や侮辱罪が「公然性」を要件とするのに対し、名誉感情の侵害は、非公開のDM(ダイレクトメッセージ)やメールなど、一対一の通信であっても成立する可能性があります。これは、内部的な自尊心は「公然」であるかどうかに関わらず傷つけられるためです。
ただし、ネットトラブルの多くは公然の場で行われるため、実際には名誉毀損や侮辱罪と合わせて論じられることも多くあります。
3 名誉感情の侵害で請求できる慰謝料
慰謝料の額は、以下の要素によって増減します。
①表現の悪質性・強度:使用された言葉の卑劣さや、人格否定の度合い。
②継続性・反復性:一度きりではなく、長期間にわたり暴言が繰り返されたか。
③被害者の年齢・属性:被害者の社会的立場や、未成年者であるかどうかなど。
④加害者の態度:反省の有無や謝罪の有無。
4 まとめ
「名誉毀損」の要件である具体的な事実の摘示がないからといって、「法的措置は取れない」と諦める必要はありません。
単なる「バカ」「アホ」といった抽象的な言葉であっても、社会通念上の許容限度を超えた悪質な暴言や罵倒が、長期間にわたって繰り返された場合は、名誉感情の侵害として民事上の責任を追及できる可能性があります。

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