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誹謗中傷と名誉毀損の違いとは?侮辱罪との境界線や成立要件

2026-01-31

インターネット上で悪口を書かれたとき、「これは誹謗中傷だ!」「名誉毀損で訴えてやる!」と思う方は多いでしょう。しかし、法律の世界には「誹謗中傷罪」という名称の犯罪は存在しません。

法的に問題となるのは、主に「名誉毀損(めいよきそん)」と「侮辱(ぶじょく)」の2つです。この2つは似ているようで、成立するための条件が大きく異なります。

今回は、ネットトラブルで最も重要なこの2つの違いについて解説します。

1 「事実」を摘示しているかどうかが分かれ目

名誉毀損と侮辱、どちらに当てはまるかを判断する最大のポイントは、書き込みの中に「具体的な事実」が含まれているかどうかです。

(1)名誉毀損罪(刑法230条)

「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。

ここでのポイントは「事実の摘示」です。

例えば、「Aさんは会社の金を横領している」「Bさんは不倫をしている」といった書き込みは、証拠の有無にかかわらず「具体的なエピソード(事実)」を示して相手の社会的評価を下げているため、名誉毀損になり得ます。

(2)侮辱罪(刑法231条)

「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合に成立します。

具体的なエピソードはなくとも、相手の人格を否定するような言葉がこれに該当します。 例えば、「バカ」「アホ」「チビ」「ハゲ」「無能」といった抽象的な罵倒は、事実の摘示ではないため、名誉毀損ではなく侮辱罪の対象となります。

2 「公然と」とはどういう意味か?

どちらの罪にも共通する要件として「公然と」という言葉があります。

これは「不特定または多数の人が認識できる状態」を指します。

インターネット上の掲示板、X(旧Twitter)、インスタグラムのコメント欄などは、誰でも見ることができるため「公然と」の要件を満たします。

一方で、1対1のダイレクトメール(DM)や、少人数の鍵付きグループチャット内での悪口は、原則として「公然性」がないため、名誉毀損や侮辱罪は成立しにくい傾向にあります

3 民事上の損害賠償額(慰謝料)の違い

刑事罰だけでなく、民事裁判で慰謝料を請求する場合も、名誉毀損と侮辱では相場が異なります。

①名誉毀損の場合

社会的信用へのダメージが大きいため、慰謝料相場は数十万円〜百万円程度(個人の場合)と高めになる傾向があります。

②侮辱(名誉感情の侵害)の場合

抽象的な悪口にとどまるため、数万円〜数十万円程度にとどまるケースが多いです。

4 どちらかわからなくても弁護士へ相談を

「この書き込みは事実のような、悪口のような、どちらとも取れる…」と迷うケースも少なくありません。 ご自身で判断して「これは罪にならないかも」と諦めてしまう前に、専門家である弁護士にご相談ください。文脈全体を分析し、法的にどの権利侵害を主張できるか、最適な構成案をご提案します。

投稿者が未成年だった場合:親権者への損害賠償請求は可能か?

2026-01-21

発信者情報開示請求によって匿名投稿者を特定した結果、その加害者が中学生や高校生などの未成年者であったというケースは少なくありません。特にSNS上での不用意な発言や「ノリ」による誹謗中傷、いじめなどが原因となる場合です。

加害者が未成年である場合、「未成年だから責任は問えないのではないか」と考える被害者の方もいますが、そのようなことはありません。未成年者が行った違法な行為についても、民事上の責任を追及することは可能です。

1 未成年者本人への責任追及:責任能力の有無

まず、未成年者本人に直接、損害賠償責任を負わせることができるかどうかは、その未成年者に「責任能力」があるかどうかによって判断されます(民法712条)。

(1)責任能力とは

自己の行為が法的にどのような結果を招くかを理解し、判断できる精神能力を指します。

一般的な目安:裁判実務では、おおむね12歳〜13歳以上の未成年者は責任能力があると判断される傾向にあります。高校生であれば、通常は責任能力が認められます。

(2)責任能力がある場合

責任能力が認められた未成年者は、成人と同じく、自身が行った誹謗中傷などの不法行為に基づき、被害者に対し直接損害賠償責任を負います。

(3)責任能力がない場合

責任能力がないと判断された未成年者(例:小学生など)は、本人に損害賠償責任を負わせることができません。この場合、責任は親権者に移行します。

2 親権者への責任追及:監督義務者としての責任

未成年者の誹謗中傷行為について、その親権者(通常は両親)に対しても損害賠償を請求できる場合があります。これは、以下の2つの法的根拠に基づきます。

(1)監督責任(民法714条)

未成年者に責任能力がない場合、その未成年者を監督する法定の義務を負う親権者(監督義務者)が、代わりに損害賠償責任を負います。

ただし、例外規定あり: 親権者が「その義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」は責任を負いません。しかし、ネット上での誹謗中傷の場合、親が子どもが何を投稿しているか適切に監督していないと判断され、責任が認められるケースが多いです。

(2)監督義務違反(民法709条)

未成年者に責任能力がある場合でも、親権者自身の「監督義務違反」を理由に損害賠償責任を追及できる可能性があります。

例:過去にもネットでトラブルを起こしていることを知っていながら放置していた、SNSの利用ルールを設けず野放しにしていたなど、親自身の監督が不十分であったと認められる場合。

現実的には、未成年者本人に経済力が乏しいことが多いため、慰謝料などの回収を確実にするためにも、親権者に対して監督義務違反による損害賠償請求を行うことが、被害者にとって最も有効な手段となります。

3 まとめ:親権者への請求を含めた戦略を

加害者が未成年であっても、誹謗中傷によって生じた被害は深刻であり、その責任を追及することは可能です。特に、未成年者本人の資力不足が予想されるため、親権者の監督責任を追及することが、慰謝料などの回収を確実にする重要な戦略となります。

開示請求で特定できた投稿者に請求できる「慰謝料」

2026-01-16

発信者情報開示請求によって匿名投稿者の特定に成功した後、いよいよその加害者に対して損害賠償請求を行います。この損害賠償の中心となるのが、精神的苦痛に対する賠償金である「慰謝料」です。

被害者が受けた苦痛は計り知れませんが、法的に請求できる慰謝料の額には、過去の裁判例に基づく一定の相場と算定基準があります。

1 慰謝料の金額を増減させる具体的な算定基準

慰謝料の額は、上記の相場を基準としつつ、以下の要素を総合的に考慮して、裁判所が判断します。

(1)加重要素(慰謝料が増額される要因)

①被害の重大性: 投稿内容が、被害者の職業や信用に致命的なダメージを与えた場合。

②表現の悪質性: 差別的、卑劣な表現、または虚偽の内容である場合。

③投稿の拡散力: 大規模なSNSや多数が閲覧する掲示板など、影響力が大きい媒体での投稿である場合。

④被害の継続性: 長期間にわたり投稿が放置されていた、または繰り返し投稿されていた場合。

⑤加害者の態度: 訴訟や交渉において反省の態度が見られない、または不誠実な対応に終始した場合。

(2)減額要素(慰謝料が減額される要因)

①投稿の軽微性: 内容が抽象的で、社会的評価の低下が限定的である場合(ただし、侮辱罪レベル)。

②公然性の低さ: 閲覧者が限定的なサイトやグループ内での投稿であった場合。

③加害者の資力: 加害者が経済的に極めて困窮している場合(ただし、原則的な相場より大幅に減額されることは稀です)。

④迅速な削除・謝罪: 加害者が特定前に自ら投稿を削除したり、特定後に速やかに謝罪したりした場合。

2 慰謝料に加えて請求できる「付随する損害」

加害者に対し請求できるのは慰謝料だけではありません。以下の費用も、不法行為(権利侵害)と因果関係のある損害として、加害者に請求します。

(1)特定にかかった弁護士費用・実費

発信者情報開示請求の手続き(仮処分、訴訟)に要した弁護士費用と裁判所への実費の全額が、損害として認められます。

(2)損害賠償請求訴訟の弁護士費用

加害者への損害賠償請求訴訟(または交渉)にかかった弁護士費用の一部(通常、認容された損害額の約1割)も、損害として加害者に負担させます。

(3)信用回復費用(事業者・企業の場合)

企業や店舗が被害者の場合、悪評の打ち消しや信用回復のために要した費用(広告費、広報費用など)も、因果関係が立証できれば請求可能です。

3 まとめ:弁護士による適切な金額の算定と交渉

慰謝料の相場は存在しますが、最終的な請求額と和解額は、弁護士による「被害の重大性」の的確な立証と、加害者との交渉力によって大きく左右されます。

特に、特定手続きに要した費用全額を加害者から回収するためにも、専門知識を持つ弁護士のサポートが不可欠です。

ネット記事のコメント欄での中傷

2026-01-11

ニュースサイトやブログなどに設けられたコメント欄は、記事に対する読者の意見交換の場として機能しますが、しばしば匿名での感情的な誹謗中傷が書き込まれる「無法地帯」と化すことがあります。

コメント欄での中傷は、被害者にとっては深刻な被害をもたらしますが、加害者がコメント投稿者である一方、そのコメントを公開しているのは記事の運営者です。

この場合、被害者は「誰に」「どのような法的責任」を問うことができるのでしょうか。

1 誹謗中傷コメントの「投稿者(コメンター)」の責任

投稿者は、自らの意思で誹謗中傷となるコメントを書き込んでいるため、一次的な法的責任を負います。

(1)民事責任(不法行為責任)

投稿内容が名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害などの不法行為に該当する場合、投稿者は被害者に対し、慰謝料を含む損害賠償責任(民法709条)を負います。

(2)刑事責任

内容によっては、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事責任を問われる可能性があります。

コメンターの責任を追及するためには、前回の記事で解説した通り、まず発信者情報開示請求の手続きにより、匿名であるコメンターの氏名・住所を特定する必要があります。

2 被害者が取るべき適切な法的対応の流れ

コメント欄での中傷被害に遭った場合、被害を最小限に抑え、責任を追及するための流れは以下のようになります。

ステップ1:証拠保全

コメントのスクリーンショット、URL、投稿日時など、証拠を確実に保全します。

ステップ2:記事運営者への削除請求

運営者に対し、コメントの削除を最優先で要求します。弁護士からの法的通知により、運営者に「権利侵害の事実」を明確に認識させ、削除義務を発生させます。

ステップ3:発信者情報開示請求の検討

削除と並行して、投稿者の特定を目指し、発信者情報開示請求手続きを開始します。これにより、投稿者の氏名・住所を特定し、損害賠償請求の準備に入ります。

ステップ4:損害賠償請求

投稿者が特定できた場合、投稿者に対し慰謝料などの損害賠償を請求します。また、運営者が削除義務を怠っていた場合は、運営者に対しても損害賠償を請求できる可能性があります。

3 まとめ:投稿者・運営者双方への法的対応

コメント欄での誹謗中傷は、加害者が匿名であることや、運営者の責任追及が複雑であることから、被害者が単独で解決することが非常に困難です。

弁護士に依頼することで、投稿者への責任追及と、運営者への削除義務の発生と追及を並行して行う、最も効果的な戦略を立てることが可能です。特に、運営者に対して迅速に法的根拠を示して削除を迫ることは、被害の拡大防止と運営者の責任追及の両面で重要な意味を持ちます。

企業のSNS炎上対策

2026-01-06

企業にとって、SNSは顧客との重要な接点であり、マーケティングや情報発信の強力なツールです。しかし、社員による不適切な投稿(いわゆる「バイトテロ」や不謹慎な発言)、あるいは企業公式アカウントの不用意な発言が原因で発生する「炎上」は、企業の信用(レピュテーション)を一瞬にして失墜させる深刻なリスクを伴います。

炎上は、単なる謝罪で収まらず、株価の下落、不買運動、そして顧客からの損害賠償請求など、法的な問題に発展する可能性を秘めています。

1 企業のSNS炎上がもたらす法的リスク

炎上の原因となった不適切な投稿は、企業に対し様々な法的責任をもたらす可能性があります。

(1)契約責任

使用者責任(民法715条): 投稿が企業の業務遂行に関連して行われた場合、企業は社員と連帯して被害者への損害賠償責任を負う可能性があります。

(2)損害賠償責任(民事)

投稿内容が他社や顧客への名誉毀損、信用毀損、またはプライバシー侵害にあたる場合、企業は被害者から民事上の損害賠償請求を受けます。

(3)刑事責任

虚偽の情報を流布したり、他社の業務を妨害したりした場合、信用毀損罪や偽計業務妨害罪(刑法)といった刑事責任を問われるリスクがあります。

2 炎上発生時の「初期対応」の重要性

炎上発生後の数時間から数日の初期対応は、被害の拡大を食い止めるために極めて重要です。誤った対応は、さらなる炎上(「二次炎上」)を招き、企業の信用を決定的に損ないます。

(1)事実関係の確認と証拠保全

感情的にならず、誰が、いつ、どのような内容を投稿したのか、冷静に事実を確認します。問題の投稿や関連するコメントの証拠を最優先で保全します(削除される前にスクリーンショット、URLを記録)。

(2)迅速な投稿の削除

問題の投稿は直ちに削除し、被害の拡大を食い止めます。削除しない限り、炎上は継続します。

(3)謝罪文の公表

速やかに、真摯で誠意ある謝罪文を公表します。謝罪文には以下の要素を含めるべきです。①事実の認容と謝罪の意:企業の非を認め、深く謝罪する。

②原因の究明と再発防止策:投稿に至った経緯を説明し、具体的な再発防止策を明記する。③法的見地の確認:投稿内容に名誉毀損や信用毀損の可能性がある場合は、謝罪文の表現について事前に弁護士の確認を得て、二次的な法的リスクを回避します。

3 平時から弁護士と連携して行うべき対策

炎上リスクを未然に防ぎ、万が一の際の対応をスムーズにするためには、平時からの法的準備が不可欠です。

(1)SNS利用ガイドラインの策定

社員に対し、SNS利用に関する明確なルールを定めたガイドラインを策定し、周知徹底します。特に、「他社の誹謗中傷禁止」「機密情報の漏洩禁止」「会社名義での不適切な発言禁止」などを盛り込む必要があります。

(2)社員教育(コンプライアンス研修)の実施

ガイドラインに基づき、社員への定期的な研修を実施します。投稿の法的リスク(名誉毀損、著作権侵害など)について、具体例を交えて教育します。

(3)緊急対応マニュアルの整備

炎上発生時の「誰が」「いつ」「何を」行うか、連絡体制や対応手順(証拠保全、削除、謝罪文作成、広報部門との連携)を明記したマニュアルを弁護士と連携して作成します。

4 まとめ:弁護士は「リスクマネジメントのパートナー」

企業のSNS炎上は、単なる広報の問題ではなく、信用・業務・雇用といった様々な法的リスクを内包する重大な危機です。

炎上発生時に冷静かつ適切な初期対応を取れるかどうかで、企業の将来が左右されます。弁護士は、炎上した際の法的リスクを最小限に抑えるための謝罪文のリーガルチェックや、社員への懲戒処分に関する適法性の確認、そして被害者からの損害賠償請求への対応を一貫してサポートします。

「名誉感情の侵害」で訴えることはできる?

2026-01-01

インターネット上の誹謗中傷は、被害者の社会的評価を下げる「名誉毀損」(事実の摘示が必要)や「侮辱」(事実の摘示は不要だが公然性が必要)といった形で法的責任を問われることが一般的です。

しかし、法的責任を問えるのは、これらの罪に該当する場合だけではありません。特定の個人に対するひどい暴言や罵倒は、その人の「名誉感情」を傷つける行為として、民事上の損害賠償請求の対象となる可能性があります。

1 名誉毀損と「名誉感情の侵害」の決定的な違い

名誉毀損と名誉感情の侵害は、どちらも「名誉」という言葉を含みますが、法的に保護される対象が異なります。

保護される対象名誉毀損名誉感情の侵害
対象外部的名誉:社会における客観的な評価・地位内部的名誉:自分自身が大切にする自尊心や名誉意識
成立要件(1) 公然性、(2) 事実の摘示(または事実の摘示がなくても侮辱となる暴言)侮辱的な言動により、個人の自尊心が社会通念上許容されない程度に侵害されたこと
主な例「あの人は会社の金を横領している」「お前は生きてる価値がない」「気持ち悪い」といった、単なる罵倒や悪口

2 名誉感情の侵害が認められる基準

「名誉感情」は個人の主観的なものであるため、単に「傷ついた」というだけでは法的侵害として認められません。裁判所が名誉感情の侵害を認めるのは、書き込みが以下の基準を満たす場合です。

(1)社会通念上許容される限度を超えた侮辱的表現であること

その表現が、一般の社会生活において許容される限度を明らかに超えていると判断される必要があります。

(2)公然性は原則として不要

名誉毀損や侮辱罪が「公然性」を要件とするのに対し、名誉感情の侵害は、非公開のDM(ダイレクトメッセージ)やメールなど、一対一の通信であっても成立する可能性があります。これは、内部的な自尊心は「公然」であるかどうかに関わらず傷つけられるためです。

ただし、ネットトラブルの多くは公然の場で行われるため、実際には名誉毀損や侮辱罪と合わせて論じられることも多くあります。

3 名誉感情の侵害で請求できる慰謝料

慰謝料の額は、以下の要素によって増減します。

①表現の悪質性・強度:使用された言葉の卑劣さや、人格否定の度合い。

②継続性・反復性:一度きりではなく、長期間にわたり暴言が繰り返されたか。

③被害者の年齢・属性:被害者の社会的立場や、未成年者であるかどうかなど。

④加害者の態度:反省の有無や謝罪の有無。

4 まとめ

「名誉毀損」の要件である具体的な事実の摘示がないからといって、「法的措置は取れない」と諦める必要はありません。

単なる「バカ」「アホ」といった抽象的な言葉であっても、社会通念上の許容限度を超えた悪質な暴言や罵倒が、長期間にわたって繰り返された場合は、名誉感情の侵害として民事上の責任を追及できる可能性があります。

誹謗中傷の「証拠」を確保する方法

2025-12-27

インターネット上の誹謗中傷やプライバシー侵害に対し、削除請求や加害者の特定(発信者情報開示請求)、そして損害賠償請求といった法的措置を進める上で、最も重要で、かつ最初のステップとなるのが「証拠の保全」です。

問題の書き込みは、サイト運営者によって削除されるか、ログが流れて閲覧できなくなるなど、いつ失われてもおかしくありません。証拠が失われてしまうと、その後のあらゆる法的手段が困難になります。

1 法的証拠として必要な3つの要素

単に書き込みの内容を記録するだけでなく、後の裁判手続きにおいて有効な証拠として認められるためには、以下の3つの要素を明確に記録する必要があります。

(1)書き込みの内容そのもの

名誉毀損やプライバシー侵害にあたる具体的な文章全体です。文章だけでなく、関連する画像や動画、アイコンなども含めて記録します。

(2)掲載場所を特定する情報(URL)

その書き込みがどこに掲載されているかを示すURL(ウェブアドレス)です。URLが正確でなければ、どのサイトのどのページで侵害が発生したのかを特定できません。

(3)掲載された日時(タイムスタンプ)

その書き込みがいつ閲覧可能であったかを示す日時情報です。発信者情報開示請求では、特にプロバイダのログ保存期間との関係で、この日時情報が極めて重要になります。

2 最も基本的な証拠保全:スクリーンショット

スマートフォンやパソコンで簡単に取得できるスクリーンショットは、最も手軽な証拠保全の方法です。しかし、裁判の場で証拠能力を認められるためには、以下の点に注意が必要です。

①URLと日時を必ず含める: 画面上部に、アドレスバーに表示されたURL(完全なもの)と、パソコンやスマートフォンのシステム日時(時計)が写り込むように撮影します。これにより、いつ、どこにその情報があったかを証明しやすくなります。

②ページ全体を撮影する: 画面をスクロールして見切れた部分がある場合、その部分も漏れなく撮影します。全体が連続していることを示すため、必要に応じて画面を連結する機能(スクロールキャプチャなど)を利用します。

③改変しない: スクリーンショットをトリミングしたり、内容の一部を塗りつぶしたりといった一切の改変は避けてください。改変した証拠は、信頼性を疑われ、無効とされるリスクが高まります。

3 信頼性が高い証拠:ウェブ魚拓の活用

通常のスクリーンショットは、技術的には加工が容易であるため、相手方から証拠能力を争われるリスクがあります。これを補強するために有効なのが、ウェブ魚拓の利用です。

ウェブ魚拓サービス(アーカイブサービス)は、ウェブサイトの当時の状態を第三者のサーバーに保存するサービスです。

①利用のメリット: 第三者によってタイムスタンプが証明された形でページの内容が固定されるため、「自分で後から加工したものではない」という証拠としての信頼性が高まります。

②利用の注意点: 魚拓サービス自体がその証拠の真実性を完全に保証するわけではありません。可能であれば、スクリーンショットと魚拓の両方を保全することが最も確実です。

4 まとめ:証拠保全は「発見したら即座に」

誹謗中傷の法的対応は、証拠の有無にかかっています。

「後でいいか」と放置している間に、書き込みが削除されたり、プロバイダのログが消去期限を迎えてしまったりすると、弁護士も打つ手がなくなってしまいます。

被害を発見した際は、「なぜその書き込みが違法なのか」を判断する前に、まずは「URL、日時を含めた画面全体のスクリーンショット」の保全を最優先で行ってください。

匿名掲示板(5chなど)の書き込みを削除する方法

2025-12-22

匿名掲示板、特に「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)」などに代表されるプラットフォームは、その匿名性の高さから、悪質な誹謗中傷やプライバシー侵害の温床となりやすい側面があります。

「匿名だから特定されない」という誤解から、個人を特定できる情報や虚偽の悪評などが書き込まれ、被害が深刻化するケースが少なくありません。

匿名掲示板の運営者は、その運営方針から削除に慎重な姿勢を見せることが多く、任意の削除請求が難航しがちです。

1 匿名掲示板の書き込み削除を求める2つのルート

匿名掲示板の書き込みは、その内容が「違法な権利侵害」にあたることが明確であれば、削除が可能です。主な削除ルートは以下の2つです。

(1)サイト管理者への任意削除依頼

掲示板の運営者が設けている削除依頼フォームやガイドラインを通じて、削除を要請するルートです。この手続きは非公開で進行し、運営者が独自に定めた削除基準(利用規約違反や明らかに違法な情報など)に基づいて判断されます。

(2)裁判所への削除仮処分申立て

任意での削除が拒否されたり、急を要する場合に、裁判所に削除を命じる仮処分を申し立てる法的手段です。裁判所が書き込みの「権利侵害の有無」を迅速に審理し、権利侵害が認められれば、運営者に対して削除を命じる決定(削除仮処分命令)が出されます。

2 削除仮処分申立ての手順と弁護士の役割

匿名掲示板に対する削除請求の一般的な手順は以下の通りです。

(1)証拠の保全

書き込みのスクリーンショット、URL、投稿日時など、証拠を確実に保全します。匿名掲示板では、ログが流れやすい(過去ログ化する)ため、発見後すぐに保全することが重要です。

(2)権利侵害性の法的評価

書き込みが名誉毀損、プライバシー侵害、信用毀損などのうち、どの権利侵害に当たるかを法的に評価します。抽象的な批判や感想(侮辱)なのか、具体的な事実の摘示(名誉毀損)なのかによって、申立ての方向性が変わります。

(3)削除仮処分申立て

裁判所に対し、問題の書き込みが「削除を求めるべき権利侵害」にあたることを主張する申立書を提出します。申立書には、「なぜ削除を急ぐ必要があるのか(緊急性)」を具体的に記載する必要があります。

(4)担保金(保証金)の準備

削除仮処分手続きでは、万が一、削除が不当であった場合に相手方が被る損害に備えて、裁判所が定める担保金を供託する必要があります。削除が認められれば、この担保金は手続き終了後に全額返還されます。

(5)削除命令の発令と実行

裁判所の審理(非公開の「審尋」という形で、書面審査が主)を経て、削除仮処分命令が発令されます。この命令を運営者に送付することで、書き込みが強制的に削除されます。

3 まとめ:匿名掲示板のトラブル解決は専門家へ

匿名掲示板の書き込みは、一度広まるとその影響が長期にわたるため、迅速かつ確実な削除が求められます。

任意の削除依頼で時間を浪費するよりも、最初から法的強制力のある削除仮処分を視野に入れ、弁護士に依頼することが、最もスピーディーで確実な解決策となります。

口コミサイトに悪質な「嘘の評価」を書かれた!

2025-12-17

現代において、消費者や顧客がサービスを選ぶ際に、口コミサイトやレビューアプリの評価は非常に大きな影響力を持ちます。飲食店、美容院、クリニック、宿泊施設など、あらゆる事業において、ネット上の評判は「生命線」といっても過言ではありません。

しかし、その匿名性の高さから、競合他社による悪質な営業妨害や、個人的な恨みによる根拠のない「嘘の評価」が書き込まれるケースが後を絶ちません。これらの悪質口コミは、単なる名誉毀損にとどまらず、信用毀損罪や業務妨害罪に該当する可能性があり、事業者に致命的な損害をもたらします。

1 虚偽の口コミが該当する法的責任

悪質な口コミは、その内容によって以下の複数の法的責任を問われる可能性があります。

(1)名誉毀損(民事・刑事)

「事実」を摘示して、公然と事業者の社会的評価を低下させる行為です。

例: 「このクリニックは不潔で感染症を引き起こす」「この店は客からぼったくりをしている」

(2)信用毀損罪・偽計業務妨害罪(刑事)

事業者の信用を毀損したり、虚偽の風説を流布したりして、その業務を妨害する行為です。

例: 「店が経営危機で近々閉店するらしい」「予約システムが故障して機能していない」 名誉毀損よりも広範な行為を対象としており、刑事罰として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

(3)不法行為に基づく損害賠償請求(民事)

民事上、不法行為(民法709条)として、事業者側が被った損害(売上減少分、信用回復のための費用、弁護士費用など)の賠償を加害者に請求できます。

2 まず行うべきは「迅速な削除請求」

損害の拡大を防ぐため、悪質口コミを発見した際には即座に削除請求を行う必要があります。

(1)証拠の保全

削除されると証拠が失われるため、書き込みのURL、投稿日時、ユーザー名(アカウント名)、書き込み全文をスクリーンショットやウェブ魚拓で記録します。

(2)サイト管理者への削除要請

Googleマップ、食べログ、病院の口コミサイトなど、各プラットフォームのガイドラインや削除依頼フォームを利用して、削除を要請します。この際、「書き込まれた内容が虚偽であり、名誉毀損・信用毀損にあたる具体的な根拠」を明確に示す必要があります。

(3)削除の仮処分申立て

サイト運営者が任意での削除に応じない場合や、対応が遅い場合は、裁判所に対して削除を命じる仮処分を申し立てます。裁判所による迅速な判断を仰ぐことで、強制的に書き込みを削除させます。

3 まとめ:事業を守るための初期対応の重要性

虚偽の悪質口コミは、事業者の信用を根底から揺るがします。

インターネットトラブルに特化した弁護士は、単なる削除依頼に留まらず、口コミの「違法性」を法的に評価し、削除の仮処分、発信者情報開示請求、損害賠償請求、さらには刑事告訴まで、事業者の信用回復と損害の最小化を目指した複合的な戦略を提案・実行します。

口コミ被害を発見されたら、証拠を保全したうえで、一刻も早く弁護士にご相談ください。

SNSでの誹謗中傷、削除依頼の方法と注意点:サイト管理者への任意の削除請求

2025-12-12

インターネット上の誹謗中傷は、拡散性が極めて高く、放置すれば被害が雪だるま式に拡大していく可能性があります。特にSNSや匿名掲示板では、たった一つの悪質な書き込みが瞬時に拡散し、取り返しのつかない事態に発展するケースが少なくありません。

被害を食い止め、精神的な苦痛を軽減するために、まず最初に行うべき法的措置が「削除請求」です。加害者の特定(発信者情報開示請求)には数ヶ月を要することが多いのに対し、削除請求は迅速性が求められます。

1 任意の削除請求とは?法的手段との違い

削除請求には、主に「任意の手続き」と「裁判所を通じた手続き(仮処分)」の2種類があります。

任意の削除請求とは、被害者側からサイトやSNSの運営者(管理者)に対し、問題の書き込みが名誉毀損やプライバシー侵害などの「権利侵害」にあたることを示し、任意の判断で削除するよう求める手続きです。

【任意の手続きの特徴】

①メリット: 裁判所を通さないため、費用が比較的安価で、迅速な対応が期待できる。

②デメリット: 運営者が独自に定めた基準(利用規約違反など)に基づき判断するため、法的に権利侵害が認められる場合でも、削除されないことがある。

運営者がこの任意の請求に応じない、または対応が遅い場合は、裁判所へ削除の仮処分を申し立てるという、より強制力のある法的手段に移行します。

2 任意の削除請求の手順と注意点

サイト管理者は、プロバイダ責任制限法に基づき、権利侵害の明白性があれば投稿を削除する義務を負います。任意の削除請求を効果的に行うための手順と注意点は以下の通りです。

(1)証拠の保全を最優先する

削除請求を行う前に、必ず問題の書き込みの証拠を保全してください。書き込みが削除されると、その証拠は失われてしまいます。

①証拠保全の具体例: 該当ページのスクリーンショット、URL、投稿日時、ユーザー名などを記録します。

②注意点: 証拠の保全は、後の発信者情報開示請求や損害賠償請求の際にも極めて重要となります。

(2)サイト管理者の窓口を確認する

各SNSや掲示板には、削除依頼のための専用フォームやガイドラインが設けられています。まずはその窓口を探し、その運営者が定めた手順に従うことが基本です。

①SNSの場合: 各プラットフォーム(X、Instagram、Facebookなど)のヘルプセンターや報告機能を利用します。

②匿名掲示板などの場合: サイト内の問い合わせフォームや、運営者に直接メールを送る方法が一般的です。

(3)権利侵害の根拠を明確に示す

単に「不快だから削除してほしい」という感情論では、削除は認められません。「なぜその書き込みが違法な権利侵害(名誉毀損、プライバシー侵害など)にあたるのか」を論理的に説明する必要があります。

3 まとめ:弁護士による迅速な対応がカギ

任意の削除請求は、被害を食い止めるための最初の防御策です。しかし、迅速かつ効果的に削除を実現するためには、法的根拠を明確にし、説得力のある形で請求を行う必要があります。

①証拠保全が遅れると、削除された痕跡も特定困難になります。

②権利侵害性の主張が不十分だと、時間だけが過ぎて被害が拡大します。

当事務所では、誹謗中傷対策の経験豊富な弁護士が、証拠保全からサイト管理者への法的通知書の送付、そして必要に応じた裁判所への仮処分申立てまで、一連の手続きを迅速かつ的確に代行いたします。手遅れになる前に、まずは一度ご相談ください。

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