1 Bittorrentの仕組みを理解していなかったとの抗弁について
Bittorrentは、ファイル共有ソフトですので、何らかのデータをダウンロードする場合、自動的に自身がダウンロードしたデータがアップロードされてしまう仕組みとなっています。
そのため、データのダウンロード自体が著作権法に違反する違法なものなのですが、アップロードもしてしまっているということで、損害賠償額や刑事罰が一段階重いものとなる可能性が出てきます。
Bittorrentの利用に伴う著作権侵害によって発信者情報開示請求をされてしまった方の中には、Bittorrentの仕組みを理解しておらず、アップロードされるなんて知らなかったという方がおります。
しかしながら、結論としては、このような抗弁を主張しても法的にはなかなか受け入れられないというのが実情です。
というのも、そもそも、Bittorrentによってデータをダウンロードする場合には、自動的にアップロードされてしまう旨の警告が表示されるクライアントソフトウェアもありますし、仮にそのような警告がでなかった場合にでも、裁判例上は、Bittorrentを利用してデータをダウンロードすれば、他の利用者の要求に応じて自動的に当該データが送信可能な状態になることはインターネット上で説明されており、少なくとも過失があることは認められてしまっているところです(大阪地判令和3年4月22日)。
また、Bittorrentの利用に関しては、「何の責任もないから、開示請求が届いても無視すればよい」等のコメントが匿名掲示板等でなされることもあります。しかしながら、東京地判令和3年8月27日や知財公判令和4年4月20日等、新たな裁判例も出ているところですが、利用者の一定程度の損害賠償責任は認めていますので、何の責任も生じないという風に高を括ることは非常に危険である点には十分ご注意ください。
昨今のインターネットやSNS等の使用状況を踏まえますと、著作権侵害という意識のない投稿も非常に多くなされており、著作権者側が具体的な動きを起こしていないことから何らの問題ともなっていないようなケースが非常に多くあるというのが実情です。
しかしながら、Bittorrentに関してはその仕組上非常にリスクの高いものとなりますので、利用する際には十分ご注意ください。
2 他人の著作物の利用には十分ご注意ください
インターネットやSNS上での軽はずみなダウンロードやアップロードを行うことは、発信者情報開示請求の対象となり、最終的には多額の損害賠償が課されることにつながりかねませんし、そもそも著作権法上の刑事罰も規定されているものであり、犯罪に該当する可能性も非常に高い行為と言わざるを得ません。
「ほかの人も行っていることだ」、「ちょっと気になった動画をダウンロードしただけなので、そこまで大事にはならないだろう」、「難しい仕組みはよくわからないが、便利そうなので使用してみよう」等といった軽い気持ちで対応をすることは非常に危険です。
他方で、発信者が特定された後で、(自称)権利者側が慰謝料等の名目で法外な金額を賠償金として請求してくることも残念ながらありますので、安易には対応せず、自分の行為を反省しつつも慎重に対応することが重要であるということにも留意が必要です。
弊事務所は、著作権侵害を含むインターネットトラブル(Bittorrent等のファイル共有ソフトの利用に伴う発信者情報開示請求への対応を含む)を幅広く取り扱っておりますので、発信者情報開示請求への対応等でお困りの方は、まずはお気軽にご相談ください。