現代において、消費者や顧客がサービスを選ぶ際に、口コミサイトやレビューアプリの評価は非常に大きな影響力を持ちます。飲食店、美容院、クリニック、宿泊施設など、あらゆる事業において、ネット上の評判は「生命線」といっても過言ではありません。
しかし、その匿名性の高さから、競合他社による悪質な営業妨害や、個人的な恨みによる根拠のない「嘘の評価」が書き込まれるケースが後を絶ちません。これらの悪質口コミは、単なる名誉毀損にとどまらず、信用毀損罪や業務妨害罪に該当する可能性があり、事業者に致命的な損害をもたらします。
このページの目次
1 虚偽の口コミが該当する法的責任
悪質な口コミは、その内容によって以下の複数の法的責任を問われる可能性があります。
(1)名誉毀損(民事・刑事)
「事実」を摘示して、公然と事業者の社会的評価を低下させる行為です。
例: 「このクリニックは不潔で感染症を引き起こす」「この店は客からぼったくりをしている」
(2)信用毀損罪・偽計業務妨害罪(刑事)
事業者の信用を毀損したり、虚偽の風説を流布したりして、その業務を妨害する行為です。
例: 「店が経営危機で近々閉店するらしい」「予約システムが故障して機能していない」 名誉毀損よりも広範な行為を対象としており、刑事罰として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
(3)不法行為に基づく損害賠償請求(民事)
民事上、不法行為(民法709条)として、事業者側が被った損害(売上減少分、信用回復のための費用、弁護士費用など)の賠償を加害者に請求できます。
2 まず行うべきは「迅速な削除請求」
損害の拡大を防ぐため、悪質口コミを発見した際には即座に削除請求を行う必要があります。
(1)証拠の保全
削除されると証拠が失われるため、書き込みのURL、投稿日時、ユーザー名(アカウント名)、書き込み全文をスクリーンショットやウェブ魚拓で記録します。
(2)サイト管理者への削除要請
Googleマップ、食べログ、病院の口コミサイトなど、各プラットフォームのガイドラインや削除依頼フォームを利用して、削除を要請します。この際、「書き込まれた内容が虚偽であり、名誉毀損・信用毀損にあたる具体的な根拠」を明確に示す必要があります。
(3)削除の仮処分申立て
サイト運営者が任意での削除に応じない場合や、対応が遅い場合は、裁判所に対して削除を命じる仮処分を申し立てます。裁判所による迅速な判断を仰ぐことで、強制的に書き込みを削除させます。
3 まとめ:事業を守るための初期対応の重要性
虚偽の悪質口コミは、事業者の信用を根底から揺るがします。
インターネットトラブルに特化した弁護士は、単なる削除依頼に留まらず、口コミの「違法性」を法的に評価し、削除の仮処分、発信者情報開示請求、損害賠償請求、さらには刑事告訴まで、事業者の信用回復と損害の最小化を目指した複合的な戦略を提案・実行します。
口コミ被害を発見されたら、証拠を保全したうえで、一刻も早く弁護士にご相談ください。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
