近年、仮想通貨やNFT、海外投資商品などをテーマにした“投資系アカウント”がSNS上で急増しています。「元手5万円で月利20%」「スマホ1台で不労所得」など、魅力的な言葉で投資初心者を引きつける手法が多く見られます。しかしその中には、**実態のない投資話や出口のない仕組みを用いた“投資詐欺”**も多数含まれており、若年層を中心に被害が拡大しています。
本記事では、SNS上で行われる仮想通貨・投資詐欺の典型的な手口と、被害回復を困難にしている法的課題について解説いたします。
このページの目次
1 よくある詐欺の手口
①高配当を謳う偽の投資話
「3カ月で2倍」「必ず儲かる」といった触れ込みで、出金できない自社トークンや海外プラットフォームに資金を送金させる。
②偽の仮想通貨取引所への誘導
本人確認なしで登録できる「独自取引所」へ誘導し、出金不能の状態に。サポートも存在せず、資金が実質凍結される。
③“美人アカウント”による恋愛型投資詐欺(ロマンス詐欺)
SNSで交流した相手から親密さを装って投資を持ちかけられる。実在しない人物・案件であることが多い。
④マルチ商法型の紹介報酬制度
「紹介すればするほど稼げる」と説明されるが、実際は後続の資金が途切れると破綻する典型的なポンジ・スキーム。
2 法的に問われ得る責任
①詐欺罪(刑法246条)
最初から返金意思がないにもかかわらず資金を募っていた場合は、詐欺罪が成立する可能性があります。
②出資法・金融商品取引法違反
無登録での投資勧誘や、虚偽の投資内容で資金を集める行為は、出資法や金融商品取引法に違反します。
③不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
個人間であっても、虚偽説明により金銭を交付させた行為は、損害賠償の対象となります。
3 被害回復が困難な理由
①加害者が海外拠点・実体不明
仮想通貨詐欺では、加害者が海外に拠点を置き、個人情報も偽名・使い捨てアカウントである場合が多く、民事訴訟・刑事告訴の相手特定自体が困難です。
②送金手段が追跡しにくい
暗号資産は送金履歴がブロックチェーン上に残るものの、ウォレット所有者の特定には限界があり、追跡しても現実的に資金回収ができないことが多いです。
③被害届の受理が消極的なケースも
捜査機関によっては「個人間のトラブル」「詐欺とは断定できない」として、受理に消極的なケースもあります。
4 裁判例・行政対応
金融庁は、未登録業者による仮想通貨販売や海外投資詐欺について、継続的に警告を発出しています。また、一部の自治体では“ロマンス詐欺”による仮想通貨被害に対する特設相談窓口を設けており、高齢者や若年層への啓発も進められています。
ただし、被害回復には至らない例も多く、民事・刑事の両面での対応には相応の労力と専門性が求められます。
SNS上での投資勧誘は、その匿名性と親密さから、一見して正当な取引に見えることが多いのが特徴です。
しかし、冷静に考えれば「元本保証」や「必ず儲かる」投資など存在せず、短期間で高利益を約束する話の大半は詐欺に近い構造です。
少しでも不審に感じたら、送金や口座登録の前に専門家へ相談することが、最大の防御策になります。万一被害に遭った場合は、証拠を確保し、弁護士や消費生活センターに速やかに相談しましょう。

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