近年、InstagramやX(旧Twitter)、Facebookなどに表示される広告投稿(プロモーション投稿)は、企業にとって重要なマーケティング手段となっています。しかしながら、それらの広告のコメント欄に悪意ある書き込みが殺到し、「炎上状態」となるケースも珍しくありません。中には、関係のない誹謗中傷や虚偽の風評、競合他社による妨害と思われる投稿も含まれており、広告主の社会的信用や売上に深刻な影響を及ぼすこともあります。
本記事では、SNS広告のコメント欄における「荒らし行為」とその法的評価、企業が取り得る対応策を解説します。
このページの目次
1 コメント欄の荒らし行為とは?
SNS広告のコメント欄に見られる荒らし行為には、以下のようなものがあります。
①「詐欺企業」「違法商法」など根拠のない中傷
②関係のない性的・暴力的表現
③競合他社の名を出して誘導するコメント
④宣伝内容に対する極端に攻撃的な揶揄や風評
⑤同じ文言のスパム投稿を繰り返す
これらは、単なる批判の域を超えて、名誉毀損、信用毀損、業務妨害などの違法行為に該当する可能性があります。
2 荒らし投稿者の法的責任
広告主やその商品・サービスに対して虚偽の内容や誇張した攻撃を加えた場合、以下の法的責任が生じるおそれがあります。
①名誉毀損・信用毀損罪(刑法230条・233条)
「○○社は詐欺」「○○製品に有害物質がある」など虚偽の情報で企業の名誉を傷つけた場合、刑事責任を問われる可能性があります。
②業務妨害罪(刑法234条)
広告投稿に意図的に大量の嫌がらせコメントを付け、顧客の流入を阻害するような行為は、業務妨害罪が成立し得ます。
③不法行為による損害賠償(民法709条)
風評被害により売上が下がった場合、投稿者に対し損害賠償を請求できる場合があります。
3 裁判例:SNSコメントによる業務妨害の認定
ある裁判例では、SNS広告に対し「詐欺だ」「騙された」などと執拗に書き込んだユーザーに対し、広告主が発信者情報開示請求を行い、特定後に100万円の損害賠償を認めた事例があります。
裁判所は「表現の自由を逸脱した違法な名誉毀損」と認定しました。
4 広告主の対応策とリスク管理
①削除・ブロック対応
明らかに違法または規約違反に該当する投稿は、プラットフォームのルールに従って速やかに削除申請し、必要に応じて投稿者をブロックします。
②証拠の保存と開示請求
悪質な場合はスクリーンショット等で証拠を保存し、SNS運営会社に発信者情報開示請求を行います。
③広報・法務の連携
炎上時には広報対応と並行して、法的措置を検討していることを発信することで、被害の拡大を防止する効果もあります。
SNS上の広告は双方向性を活かせる強力なマーケティング手段ですが、コメント欄という“公共空間”に近い場をどう管理するかが問われる時代です。違法な書き込みに対しては、毅然とした態度で臨むとともに、法的手段を講じる構えを見せることで、一定の抑止効果も期待できます。
トラブルの芽は放置せず、早期の対応と記録保存を徹底しましょう。

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