掲示板・SNSでの“実名晒し”と法的責任

匿名でのやり取りが主流であるインターネット空間において、他人の「実名」を晒す(公開する)行為は、重大なプライバシー侵害や名誉毀損に該当し得る違法行為です。「正当な理由があるから」「自分も被害を受けたから」といった動機があったとしても、実名晒しは極めて高い法的リスクを伴います。本記事では、掲示板・SNS上での実名晒しと、その法的責任について解説します。

1 実名晒しが問題となる典型例

①事件やトラブルの当事者の実名・勤務先・住所を投稿

②被害を受けた相手を名指しで告発

③喧嘩・クレーム・恋愛トラブルの当事者情報を晒す

④匿名掲示板での「○○は●●会社に勤務している」などの書き込み

これらは「ネット私刑」と呼ばれることもあり、社会的制裁を与える目的で個人情報を公表する行為として問題視されています。

2 プライバシー権と名誉権の侵害

実名晒しは、主に以下の法的権利を侵害する可能性があります。

①プライバシー権の侵害

個人の氏名・職業・住所・学歴などの情報は、原則として本人の同意なく公表してはならない「私生活情報」に該当します。たとえ公的情報であっても、晒す文脈や影響によっては違法となることがあります。

②名誉毀損(民事・刑事)

事実が真実であるか否かを問わず、実名とともに否定的な情報(不倫、借金、暴力など)を投稿する行為は、社会的評価を下げる行為として名誉毀損と評価される可能性が高いです。

3 裁判例:実名晒しと損害賠償命令

ある裁判例では、個人の実名とともに「過去にいじめをしていた」とする投稿が匿名掲示板に掲載された事案において、名誉毀損およびプライバシー侵害が認定され、投稿者に50万円の損害賠償が命じられました。

このように、「事実だから」としても、晒すこと自体が違法とされる場合があります。

4 実名を晒された側の対応策

①投稿の証拠保全

スクリーンショットやURLを保存し、投稿日時と内容を記録します。

②削除申請・仮処分申立て

SNS運営者・掲示板管理者に削除を申請し、応じない場合は裁判所に仮処分を申し立てます。

③発信者情報開示請求

匿名投稿者の特定を行い、損害賠償請求や刑事告訴を進めることができます。

④名誉毀損・プライバシー侵害による損害賠償請求

精神的苦痛の慰謝料、弁護士費用などの請求が可能です。

感情的な怒りや正義感から「実名を晒してやりたい」という衝動に駆られることはあるかもしれません。しかし、実名晒しは違法行為であり、自らが加害者になるリスクを負う行為です。

逆に、実名を晒された被害者側は、泣き寝入りすることなく、法律を通じて救済を求める道があります。特に、仕事・家庭・人間関係などに支障が出る場合は、早期に弁護士へ相談することを強くおすすめします。

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0358774099電話番号リンク 問い合わせバナー