スマートフォンやアクションカメラの普及により、誰もが気軽に動画を撮影・投稿できる時代になりました。観光地やイベント、街中の様子などを映した動画がYouTubeやTikTokなどにアップロードされる一方で、「他人の顔や姿が勝手に映っている」ことを巡るトラブルも増えています。本記事では、動画内での他人の映り込みと肖像権侵害の法的問題について解説いたします。
このページの目次
1 肖像権とは?
肖像権とは、自己の容貌・姿態などを撮影・公表されない権利であり、判例上、人格権の一部として認められています。
肖像権は、芸能人などの有名人だけでなく、一般人にも認められます。無断でその姿を動画に映し、インターネット上に公開することは、本人の同意がない限り、肖像権の侵害と評価される可能性があります。
2 よくある映り込みの例
①街頭インタビューやストリート動画に通行人が明確に映っている
②店舗内撮影で他の客の顔がはっきり映っている
③学校・イベントの様子を撮影した動画に、個人が特定できる児童が映っている
④撮影に同意していない知人や友人を勝手に登場させている
「たまたま映っただけ」「モザイクをかけたから問題ない」と考える人もいますが、特定性がある場合には違法性が問題となります。
3 裁判例:無断撮影・投稿による肖像権侵害の認定
ある裁判例では、ある飲食店での食事中に隣席にいた客が撮影され、その動画がYouTubeに投稿された事案について、「本人の承諾なく特定性を持って撮影・公開されたことが人格権を侵害する」として、投稿者に30万円の損害賠償が命じられました。
この裁判例は、「偶然映り込んだだけ」であっても、状況や映り方によっては肖像権侵害が成立することを明示しています。
4 映り込み被害を受けた場合の対応
①動画の証拠確保(URL・スクリーンショットなど)
映り込みが確認できる画面の記録を保存します。
②削除申請・通報
YouTube等の動画プラットフォームに対し、プライバシー・肖像権侵害を理由に削除を求める申請を行います。
③投稿者への削除要請・警告
状況に応じて、投稿者に対し直接削除を要請することも可能です。場合によっては法的警告書を送付します。
④損害賠償請求・仮処分申立て
悪質な場合や削除に応じない場合、民事訴訟や仮処分により削除命令や損害賠償を請求することが可能です。
動画投稿の自由は大切ですが、他人の権利に配慮しない投稿は「違法」となる可能性があります。 公共の場であっても、個人が特定される映り込みには十分注意を払うべきです。 映り込んでしまったことで不快な思いをした場合、まずは冷静に証拠を保全し、削除請求や相談機関への対応を進めてください。特にお子様や職場の同僚など、映ることで影響を受ける立場にある方が被害に遭った場合は、早めに弁護士へご相談ください。

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