昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和2年1月29日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
個人及び団体に対しての身辺警備請負等を目的とする会社を営む原告が、第三者が原告の姿勢や言動等に関して否定的な投稿等を繰り返し行ったことを踏まえて名誉権等を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①本件各投稿は、一般の閲覧者に対し、原告が労務管理を行う立場にあることを利用してパワーハラスメントを行っているとの印象及び原告会社がそのような人物に労務管理を担わせているとの印象を与えるものであるから、原告らの社会的評価を低下させるものである。
②証拠上、本件各記事に摘示された上記各事実は真実ではないことが認められるから、違法性阻却事由の存在をうかがわせる事情はないといわざるを得ない。
上記の裁判所の判断に関しては、妥当なものと考えられます。
会社の対応等に不満がある場合において、当該会社を非難することは自由ではありますが、度を超すと違法行為となってしまいます。少なくとも、客観的な事実に基づく批判をすべきであり、客観的な事実に基づかない投稿ということは、基本的には適法になる余地はありません。何かを批判する場合には、度を超した表現を使ってはならないことは当然ですが、そもそも客観的な事実に基づくものかどうか、という点にも注意する必要があります。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。