昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。
このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。
本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年5月27日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。
このページの目次
1 事案の概要
Aラウンジの代表を務める原告が、被告がインターネット上の匿名掲示板において原告が違法行為を行っているかのような投稿を繰り返し行ったことを踏まえて名誉権を侵害されたものとして、アクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
①ラウンジのような小規模な飲食店においては、その運営方針に代表の意向が大きく反映されることは公知の事実であり、本件投稿のような投稿をする者も、またこれを閲覧する者も、そのような事情を当然の前提として、本件掲示板を利用するものと認められる。したがって、そのような小規模な飲食店を対象とする誹謗中傷は、その代表に対する誹謗中傷にも当たると認めるのが相当である。
②投稿全体を通してみれば、原告が代表を務める本件店舗の社会的評価を低下させ、ひいては、原告の社会的評価をも低下させる内容のものであると認められる。
上記の裁判所の判断に関しては、妥当なものといえます。
小規模な商店は日本に多く存在しますが、これらは個人商店であることが多く、上記の裁判所の判断が通用するケースも多く存在すると思います。
個人批判ではなく、商店を批判しただけであるという言い分も分からなくはないですが、裁判所の判断のとおり、当然の前提として、小規模な飲食店を対象とする誹謗中傷は、その代表に対する誹謗中傷にも当たると認られる、という点は注意が必要です。
3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。