過去の職歴と名誉毀損

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年8月27日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

歯科医師である原告が、被告がインターネット上のサイトにおいて、原告に関して以前キャバクラで勤務していた等と投稿したことについて、プライバシー権や名誉権を侵害するものとしてアクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

①キャバクラは、キャバクラ嬢と呼ばれる女性が客席について接待を行う飲食店であるから、現在、歯科医師として勤務している原告にとって、過去にキャバクラで勤務し、水商売を行っていたという事実は、歯科医師としての信用を失わせ、社会的評価を低下させるというべきである。

②また、過去にキャバクラで勤務していたという経歴は、一般人の感受性を基準にすると公開を欲しない事実であり、原告自身も本名を秘匿して源氏名で勤務していたのであるから、一般に知られた事実とはいえない。

上記の裁判所の判断に関しては、過去の職歴と言っても、本人からすれば知られたくないような職歴もありますので、一般的な感覚としても自然な判断であると思われます。

投稿者としては、少し揶揄する意図で投稿しただけかもしれませんが、裁判では厳格に判断されてしまいますのでくれぐれもインターネット上の投稿にはご注意ください。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、公益目的での批判やそこまでにはいかずに単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないという自覚のもとに行われたものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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