元芸能人に対する名誉毀損

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。また、SNSや各種の匿名掲示板といったインターネット上の場において、様々な内容について個人が意見を表明することも容易になっております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年11月7日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

以前グラビアアイドル活動を行っていたXが、インターネット上のサイトにおいて、自身の生育状況や素行などについて虚偽の事実を掲載されて名誉権が侵害されたことを理由として、アクセスプロバイダに対して、発信者情報開示請求を行った事案です。

2 裁判所の判断

①同摘示に係る事実は、原告の成長過程における経済的状況や未成年の頃の就労状況が劣悪であったことをうかがわせるものであるから、その社会的評価を低下させることは明らかである。

②同事実は、原告が一時の感情によって非常識な行動に及んだことをうかがわせるものであるから、その社会的評価を低下させるものであることは明らかである。

③これらの表現は、原告が深刻な精神疾患等に罹患しているかのような表現にとどまらず、異常な行動を行っていることを頭が壊れているとか、薬物中毒であるなどとして侮辱しているものであり、そのような表現は著しく原告の名誉感情を侵害するものであるし、その表現自体を見ても断定的かつ攻撃的な記載を並べているものであり、言論としての社会的相当性を大きく逸脱しているものとして、名誉権侵害に当たるといえる。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

また、昨今の状況を踏まえて、非常に簡易な罵倒表現であっても名誉毀損などに該当すると判断される場合も多くあり、自分としては問題ないと判断して行った投稿であっても、ネガティブな内容を含む表現には危険が伴うことは十分に注意する必要があります。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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