産婦人科医院に対する名誉毀損

昨今インターネットの幅広い普及で、インターネットは老若男女問わず利用されております。また、SNSや各種の匿名掲示板といったインターネット上の場において、様々な内容について個人が意見を表明することも容易になっております。

このような状況は、幅広い意見が提起されるという側面からは良いことですが、その一方で、安易な名誉毀損や誹謗中傷を含む様々な権利侵害が多数発生してしまっているという問題もあり、この問題は社会問題となっております。

本日は、この問題を考える際に参考となる裁判例(東京地判令和元年11月11日)をご紹介いたします(なお、ご紹介の都合上、概要の記載にとどめております。)。

1 事案の概要

産婦人科医院Aは、インターネット上のサイトにおいて、自身に関して「他の産院にかかっていた時は、妊婦検診助成金チケットを使えば、エコー検査代もそれに含まれて毎回700円程度の自己負担」、「Aは助成金チケットを使っても、エコー検査代の5000円は自己負担です。ボッタクリです!」等の投稿がなされていることを踏まえ、アクセスプロバイダに対して名誉毀損を理由とする発信者情報開示請求を行った。

2 裁判所の判断

①本件投稿は、本件クリニックが不当な料金を請求し受領していると非難する趣旨のものと読める。そうすると、本件投稿は、本件クリニックを運営する原告の社会的評価を低下させるものといわざるを得ない。

②本件投稿者が、受診票を使用すればエコー検査代は自己負担にならないはずなのに、本件クリニックにおいては受診票を使用してもエコー検査代5000円を請求されるとの誤信をしたことについて相当の理由があったなどとはいえず、上記の被告の主張は採用できない。

3 インターネット上での表現行為には十分ご注意ください

投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。

また、昨今の状況を踏まえて、非常に簡易な罵倒表現であっても名誉毀損などに該当すると判断される場合も多くあり、自分としては問題ないと判断して行った投稿であっても、ネガティブな内容を含む表現には危険が伴うことは十分に注意する必要があります。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。

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