インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題となっております。インターネット上のやり取りは基本的には匿名であるという認識を有する利用者が非常に多く存在し、匿名であることから行き過ぎた言動となってしまう場合も多くあるようです。
もっとも、名誉毀損は民事上の問題だけではなく刑事事件になるリスクもあるので、十分注意が必要です。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和元年12月3日、をご紹介いたします(なお、一部を省略、要約した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告は医療法人であるところ、サービス・商品についての口コミを投稿・閲覧できるインターネット上のウェブサイトにおいて、「不衛生」、「タオルの交換は週1度」、「vio使用した機械は市販の除菌シートで拭くだけ」、「トラブル時は対応してもらえません」、等の投稿を繰り返し行われた。これに対して、原告は、当該投稿によって原告の名誉が毀損された等と主張し、プロバイダに対して投稿者に関する発信者情報開示請求を行った。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件投稿は、原告が不衛生な対応をしているとの事実を読み取るものと認められ、これが原告の社会的評価を低下させることは明らかである。そして、当該投稿に関して真実性はないものと認められる。
②また、原告には肌荒れトラブルが生じたとの訴えがあった際の対応や電話対応についてマニュアルがあり、従業員に対してこれについての指導がされていると認められ、上記摘示事実があったとは考えにくいといえる。加えて、その他本件の証拠によっても上記摘示事実があったことをうかがわせる事情がないことも踏まえれば、当該投稿には真実性がないといえる。
3 インターネットのご利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、単なる意趣返し、あるいは大したことない内容であり単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけでなく刑事事件となる可能性もあり、刑事事件となった場合には、その後の人生にも大きな悪影響を与えますので、十分に注意することが必要です。 インターネット上に何らかの投稿を行う場合には、まずはその投稿を行って問題となるかどうかを冷静に考えることが何よりも重要である点には再度ご注意ください。