インターネットの普及、SNSの幅広い利用によって、昨今インターネット上の名誉毀損は社会問題ともなっております。
本日は、1つの事例として、東京地方裁判所判決令和3年7月15日、をご紹介いたします(なお、一部を省略した、概要のご紹介となります。)。
このページの目次
1 事案の概要
原告は、青果物類の販売等を事業内容とし、市場で仕入を行うために協同組合に加入しているところ、同組合の別の組合員である被告らが、原告に関して虚偽の事実を記載した書面を送付したことによって、原告の名誉及び信用が棄損されたとして、不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案です。
2 裁判所の判断
裁判所は、大要、以下の通り判断しました。
①本件文章は、一般人の普通の注意と読み方を基準とすると、原告が保証金を差し押さえられており仕入れができない旨適示しているといえる。そして、これが真実であるとすれば、原告は代払取引の停止をされる可能性があり仕入れ先からの信用棄損につながるものといえる。
②また、取引に影響する保証金の帰趨は、取引先等にとって極めて関心が高い事柄であると考えられること、本件文書を一部の組合員に送付していても現に送付した組合員以外の者に伝播していること等に鑑みると、市場内全体に伝播する可能性があったといえる。
③なお、不法行為により相当の精神的苦痛を受けたというべきであるが、他方で原告の新規事業等具体的な影響が明確ではないことも考慮すると、慰謝料額が高額になるとまでは認められない。
3 インターネットの利用には十分ご注意ください
投稿した人物にとっては、大したことない内容であり、単なる感想に過ぎないというものであっても、客観的に見ると当人の社会的評価を下げるものである場合には名誉毀損に該当する表現となってしまいます。
表現の自由ということは非常に重要であることは間違いありませんが、他者の名誉を傷つけることは許されておりません。特に名誉毀損は、民事上問題となるだけではなく、刑事事件に発展するリスクもありますので、一歩間違えるとその後の人生に大きな悪影響を与えかねない問題となり、最大限注意をする必要があります。
ただ、予期せぬトラブルに巻き込まれることは往々にしてありますので、被害者の立場にせよ加害者の立場にせよインターネット上のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、まずは専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。