発信者情報開示請求によって匿名投稿者の特定に成功した後、いよいよその加害者に対して損害賠償請求を行います。この損害賠償の中心となるのが、精神的苦痛に対する賠償金である「慰謝料」です。
被害者が受けた苦痛は計り知れませんが、法的に請求できる慰謝料の額には、過去の裁判例に基づく一定の相場と算定基準があります。
このページの目次
1 慰謝料の金額を増減させる具体的な算定基準
慰謝料の額は、上記の相場を基準としつつ、以下の要素を総合的に考慮して、裁判所が判断します。
(1)加重要素(慰謝料が増額される要因)
①被害の重大性: 投稿内容が、被害者の職業や信用に致命的なダメージを与えた場合。
②表現の悪質性: 差別的、卑劣な表現、または虚偽の内容である場合。
③投稿の拡散力: 大規模なSNSや多数が閲覧する掲示板など、影響力が大きい媒体での投稿である場合。
④被害の継続性: 長期間にわたり投稿が放置されていた、または繰り返し投稿されていた場合。
⑤加害者の態度: 訴訟や交渉において反省の態度が見られない、または不誠実な対応に終始した場合。
(2)減額要素(慰謝料が減額される要因)
①投稿の軽微性: 内容が抽象的で、社会的評価の低下が限定的である場合(ただし、侮辱罪レベル)。
②公然性の低さ: 閲覧者が限定的なサイトやグループ内での投稿であった場合。
③加害者の資力: 加害者が経済的に極めて困窮している場合(ただし、原則的な相場より大幅に減額されることは稀です)。
④迅速な削除・謝罪: 加害者が特定前に自ら投稿を削除したり、特定後に速やかに謝罪したりした場合。
2 慰謝料に加えて請求できる「付随する損害」
加害者に対し請求できるのは慰謝料だけではありません。以下の費用も、不法行為(権利侵害)と因果関係のある損害として、加害者に請求します。
(1)特定にかかった弁護士費用・実費
発信者情報開示請求の手続き(仮処分、訴訟)に要した弁護士費用と裁判所への実費の全額が、損害として認められます。
(2)損害賠償請求訴訟の弁護士費用
加害者への損害賠償請求訴訟(または交渉)にかかった弁護士費用の一部(通常、認容された損害額の約1割)も、損害として加害者に負担させます。
(3)信用回復費用(事業者・企業の場合)
企業や店舗が被害者の場合、悪評の打ち消しや信用回復のために要した費用(広告費、広報費用など)も、因果関係が立証できれば請求可能です。
3 まとめ:弁護士による適切な金額の算定と交渉
慰謝料の相場は存在しますが、最終的な請求額と和解額は、弁護士による「被害の重大性」の的確な立証と、加害者との交渉力によって大きく左右されます。
特に、特定手続きに要した費用全額を加害者から回収するためにも、専門知識を持つ弁護士のサポートが不可欠です。

有森FA法律事務所では、インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損、プライバシー・著作権に関するトラブルなど、ネットにまつわる様々なお悩みに対応しています。スマートフォンやSNSが日常に溶け込んだ今、ネット上の問題は誰にとっても身近なリスクとなっています。東京都をはじめ全国からのご相談に対応しており、WEB会議によるご相談も可能です。ひとりで抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
