発信者情報開示請求によって匿名投稿者を特定した結果、その加害者が中学生や高校生などの未成年者であったというケースは少なくありません。特にSNS上での不用意な発言や「ノリ」による誹謗中傷、いじめなどが原因となる場合です。
加害者が未成年である場合、「未成年だから責任は問えないのではないか」と考える被害者の方もいますが、そのようなことはありません。未成年者が行った違法な行為についても、民事上の責任を追及することは可能です。
このページの目次
1 未成年者本人への責任追及:責任能力の有無
まず、未成年者本人に直接、損害賠償責任を負わせることができるかどうかは、その未成年者に「責任能力」があるかどうかによって判断されます(民法712条)。
(1)責任能力とは
自己の行為が法的にどのような結果を招くかを理解し、判断できる精神能力を指します。
一般的な目安:裁判実務では、おおむね12歳〜13歳以上の未成年者は責任能力があると判断される傾向にあります。高校生であれば、通常は責任能力が認められます。
(2)責任能力がある場合
責任能力が認められた未成年者は、成人と同じく、自身が行った誹謗中傷などの不法行為に基づき、被害者に対し直接損害賠償責任を負います。
(3)責任能力がない場合
責任能力がないと判断された未成年者(例:小学生など)は、本人に損害賠償責任を負わせることができません。この場合、責任は親権者に移行します。
2 親権者への責任追及:監督義務者としての責任
未成年者の誹謗中傷行為について、その親権者(通常は両親)に対しても損害賠償を請求できる場合があります。これは、以下の2つの法的根拠に基づきます。
(1)監督責任(民法714条)
未成年者に責任能力がない場合、その未成年者を監督する法定の義務を負う親権者(監督義務者)が、代わりに損害賠償責任を負います。
ただし、例外規定あり: 親権者が「その義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」は責任を負いません。しかし、ネット上での誹謗中傷の場合、親が子どもが何を投稿しているか適切に監督していないと判断され、責任が認められるケースが多いです。
(2)監督義務違反(民法709条)
未成年者に責任能力がある場合でも、親権者自身の「監督義務違反」を理由に損害賠償責任を追及できる可能性があります。
例:過去にもネットでトラブルを起こしていることを知っていながら放置していた、SNSの利用ルールを設けず野放しにしていたなど、親自身の監督が不十分であったと認められる場合。
現実的には、未成年者本人に経済力が乏しいことが多いため、慰謝料などの回収を確実にするためにも、親権者に対して監督義務違反による損害賠償請求を行うことが、被害者にとって最も有効な手段となります。
3 まとめ:親権者への請求を含めた戦略を
加害者が未成年であっても、誹謗中傷によって生じた被害は深刻であり、その責任を追及することは可能です。特に、未成年者本人の資力不足が予想されるため、親権者の監督責任を追及することが、慰謝料などの回収を確実にする重要な戦略となります。

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