企業にとって、SNSは顧客との重要な接点であり、マーケティングや情報発信の強力なツールです。しかし、社員による不適切な投稿(いわゆる「バイトテロ」や不謹慎な発言)、あるいは企業公式アカウントの不用意な発言が原因で発生する「炎上」は、企業の信用(レピュテーション)を一瞬にして失墜させる深刻なリスクを伴います。
炎上は、単なる謝罪で収まらず、株価の下落、不買運動、そして顧客からの損害賠償請求など、法的な問題に発展する可能性を秘めています。
このページの目次
1 企業のSNS炎上がもたらす法的リスク
炎上の原因となった不適切な投稿は、企業に対し様々な法的責任をもたらす可能性があります。
(1)契約責任
使用者責任(民法715条): 投稿が企業の業務遂行に関連して行われた場合、企業は社員と連帯して被害者への損害賠償責任を負う可能性があります。
(2)損害賠償責任(民事)
投稿内容が他社や顧客への名誉毀損、信用毀損、またはプライバシー侵害にあたる場合、企業は被害者から民事上の損害賠償請求を受けます。
(3)刑事責任
虚偽の情報を流布したり、他社の業務を妨害したりした場合、信用毀損罪や偽計業務妨害罪(刑法)といった刑事責任を問われるリスクがあります。
2 炎上発生時の「初期対応」の重要性
炎上発生後の数時間から数日の初期対応は、被害の拡大を食い止めるために極めて重要です。誤った対応は、さらなる炎上(「二次炎上」)を招き、企業の信用を決定的に損ないます。
(1)事実関係の確認と証拠保全
感情的にならず、誰が、いつ、どのような内容を投稿したのか、冷静に事実を確認します。問題の投稿や関連するコメントの証拠を最優先で保全します(削除される前にスクリーンショット、URLを記録)。
(2)迅速な投稿の削除
問題の投稿は直ちに削除し、被害の拡大を食い止めます。削除しない限り、炎上は継続します。
(3)謝罪文の公表
速やかに、真摯で誠意ある謝罪文を公表します。謝罪文には以下の要素を含めるべきです。①事実の認容と謝罪の意:企業の非を認め、深く謝罪する。
②原因の究明と再発防止策:投稿に至った経緯を説明し、具体的な再発防止策を明記する。③法的見地の確認:投稿内容に名誉毀損や信用毀損の可能性がある場合は、謝罪文の表現について事前に弁護士の確認を得て、二次的な法的リスクを回避します。
3 平時から弁護士と連携して行うべき対策
炎上リスクを未然に防ぎ、万が一の際の対応をスムーズにするためには、平時からの法的準備が不可欠です。
(1)SNS利用ガイドラインの策定
社員に対し、SNS利用に関する明確なルールを定めたガイドラインを策定し、周知徹底します。特に、「他社の誹謗中傷禁止」「機密情報の漏洩禁止」「会社名義での不適切な発言禁止」などを盛り込む必要があります。
(2)社員教育(コンプライアンス研修)の実施
ガイドラインに基づき、社員への定期的な研修を実施します。投稿の法的リスク(名誉毀損、著作権侵害など)について、具体例を交えて教育します。
(3)緊急対応マニュアルの整備
炎上発生時の「誰が」「いつ」「何を」行うか、連絡体制や対応手順(証拠保全、削除、謝罪文作成、広報部門との連携)を明記したマニュアルを弁護士と連携して作成します。
4 まとめ:弁護士は「リスクマネジメントのパートナー」
企業のSNS炎上は、単なる広報の問題ではなく、信用・業務・雇用といった様々な法的リスクを内包する重大な危機です。
炎上発生時に冷静かつ適切な初期対応を取れるかどうかで、企業の将来が左右されます。弁護士は、炎上した際の法的リスクを最小限に抑えるための謝罪文のリーガルチェックや、社員への懲戒処分に関する適法性の確認、そして被害者からの損害賠償請求への対応を一貫してサポートします。

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